夢の後先 (ページ26)

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atosaki 26 ページ26

【kento】

やっちまった。

そう思うのと同時に「カオルくん」という君の仲間をこれでもかというくらい尊敬した。

こんなこと・・・いや、君にとっては「こんなこと」じゃないかもしれないけれど、今の心地よい関係を壊したくなかったから、直ぐに「冗談」にしたのだけれど。

冗談だけじゃないことは、流石に解ったよね？

それでも俺の隣で寝てしまった君に呆れつつ、ベッドに運んでタオルケットを掛けてやり、綺麗な寝顔を見つめる。

アイドルじゃなかったら、彼の話も聴いてあげられたし、それでAちゃんに相応しいヤツだったらキューピットになってあげたのにな、と思う天使な俺。
対するは、目の前で安心しきった顔で寝息を立てる君に、男ってこんなもんだと教えてやりたい、と思う悪魔な俺。

世間の男子がこういう経験をするであろう年代に、アイドルに徹して来た俺には、ベターな選択が解らなくて。

いや、何もしないのがベターだってことくらいは解るけれど。

「お母さん・・・」

小さな寝言。母親が居ないことは、以前遠回しに聴いた。理由は教えてくれなかったが。

「そういえば、あまり自分のこと話してくれないよね」

柔らかい頬に触れる。仕事以外で女の子の顔に触れるのなんて、何時ぶりだろう。

「ゴメンね、これだけ」

・・・眠り姫へのキス。君が目覚めなかったということは、王子様は俺じゃないんだね。

それから数時間、君のベッドに寄りかかってうたた寝と覚醒を繰り返し、目覚めた君が何も訊かないから、俺も何も答えず。

あくまでも先輩という立ち位置で、俺とも、そして俺以外とも二度とこんなことが無いように、軽い束縛をして君の部屋を出たんだ。

Kおーい
K風磨のサマパラどっかで見に行くつもりなんだけど、その日終わりでもご飯行かない?

タクシーの中でスマホを弄る。

こち久しぶりだし、行こうか
KOK、じゃあ日にち決めて連絡する

本題はこれじゃない。

KAちゃん、夏休みもミドリだって
こちじゃあまた見かけるかな

好きが解らないと言ってたけれど、多分Aちゃんにとって1番「好き」に近いのは高地。

・・・実はこーちには長く付き合ってる彼女が居る。叶わないことが解ってて仕向ける俺ってドSだなと自虐しつつ。

それでも「好き」という気持ちは、ちゃんと「恋」すれば解るから。

振られたら、俺がまた話を聴いてあげるから。