夢の後先 (ページ13)

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atosaki 13 ページ13

【you】

「学童保育補助員のAAですが、担当の村上さんとお約束していて」
受付「伺っておりますので、少々お待ちください」

実家から横浜に戻ってきた翌日、私は役所に居た。

いい加減引き摺ってんじゃねーよ、と思うし、ウジウジグズグズは性に合わないし、そもそも私のキャラじゃない。そんなことはとっくの昔に解っているけれど、やっぱり3・11周辺はどーしてもどーしても。

村上「ごめんね、お待たせして」
「・・・」
村上「Aさん？」
「あ、すみません、ボーっとしてて」

切り替えろ、自分。

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「え？別な学童・・・ですか？」

呼び出された理由は、突然の配属先変更だった。

村上「Aさんにはヒガシでずっとやって貰ってたし、次4年生って言ってたから最後までヒガシって考えてたんだけど、ミドリのベテランさんが旦那さんが倒れたってことで急に入れなくなっちゃって」

これから新人を募集して研修やって・・・はいろいろ厳しいとのことで。

Aさんなら仕事に慣れているし、こちらとしても安心だし、ほら、ミドリでも家から自転車で行ける距離かなって・・・と、一生懸命しゃべり続ける村上さん。

・・・正直、3年間イチャイチャしてきた子どもたちと、こんな形でお別れするのは嫌。

だって夏休みが終わる時「また来るね！」って言っちゃったもの。やっぱり大人は嘘つきじゃん！って言われたくないし、何よりも私が悲しいよ。

でも、これは仕事だ。

アルバイトだろうと何だろうと。考えてみたら労働条件通知書にだって「あなたはずっとヒガシですよ」なんて、どこにも書いていないのだから。ＮＯ＝ＳＡＹＯＮＡＲＡだ。

「わかりました」

近いうちに顔合わせも兼ねて行ってみてねと、地図と連絡先を渡され役所を後にした。

・・・そういえば、今日、中島健人の誕生日じゃん。

「Aちゃんって、誕生日いつ？」
「9月10日です」
「夏休み中だね」
「高校までは学校だったのに、大学生になったら夏休みになっちゃったパティーンです」
「あー一緒だ」
「先輩も9月なんですか？」
「いや3月13日だけど」
「なるほど、大学生になったら春休みパティーン・・・ご愁傷様です」
「でしょ？可哀想だから祝ってくれる？」
「無理です」
「即答パティーンだな」
「その辺の時期はいろいろ無理なんです、マジで」

あの時、中島健人、目が点になってたよな。言ってないもんね。震災で母親亡くしてますなんて。

誕生日だし、たまには連絡してやるか。