夢の後先 (ページ1)

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atosaki 1 ページ1

【you】

2017年1月

「疲れた・・・。」

AA21歳、大学3年生、独身、彼氏無し。
クソ重い防具を背負い、竹刀をブラブラしながら、薄暗い住宅街を歩く。

明日から受験準備で構内には入れなくなる。部活もちょっと長めの休みになるので、手入れのために防具を持ち帰るのだ。

だってさ、ちゃんと干さないと臭いじゃん？女子としては許せないよね。

まあ、部活には現在ヤロウ共しか居ないから、1人頑張ったって臭いんだけどさ。

・・・そう、剣道部。しかもだいぶガチの「体育会系」ってやつ。
小学生の時に、某漫画の「剣術小町」に憧れ、中学校入学と同時に剣道部の門を叩いてしまったのが運の尽き。

小さい頃はその辺に落ちている棒を振り回し、その後は箒でチャンバラごっこをし(もちろん先生にはこっぴどく怒られたけどね)・・・数々の男子を打ちのめしてきた才能が開花してしまったようで、何だかんだと辞められないまま現在に至る。

かと言って、元来の運動音痴が祟って、スポーツ推薦には全く縁が無く、もちろん進学先も強豪校という訳でもなく。

体育は万年3だけど剣道だけは5、その程度の微妙なレベルでかれこれ10年近く続いてしまっている。

大学での専門は障がい児福祉で、社会福祉士を目指している。

高校時代に夏休みの宿題でボランティアがあって。なんとなく竹刀を持っていったら、車椅子の男子たちにお目目キラキラされ。
竹刀の振り回し方(いや言い方)を教えたら、大人たちにめっちゃ苦笑いされたけれど、彼らの楽しそうな笑顔が忘れられなくて。
この子たちと関わる仕事がしたいと社会福祉士になろうと決めた。

だから、大学では勉強と剣道と1人暮らしにまつわる諸々の三転倒立状態で。当然、色恋沙汰などという浮かれたモノは無くて。

「・・・女子大生って、こんなもんなの？」

くそお、私の華のキャンパスライフはどこに行ったんだよ。
勉強するために入った大学だからさ、チャラチャラ遊ぶ気は無かったけれど、彼氏の１人や２人くらいは簡単にできると思ってたのによ。

4月になれば4年生。

社会福祉学科の学生は実習先にそのまま就職できることも多く、他の学科ほど緊迫感はないんだけれど。私の第一志望は公立の肢体不自由児施設だったりするから、ガチ勉が必要だし。
そもそも社会福祉士の試験に落ちたら内定取り消されても文句は言えない業界。

ねえ知ってる？社会福祉士って、合格率3割以下だったりするんだぜ。

・・・うん、私、大変だ。