atosaki 39 ページ39
【kento】
今日ここに来たのはお土産を渡すため・・・と、もう1つ。
「ねえAちゃん」
「はひ」
「・・・うん、食べてからにしようか」
お口にモノ入れてしゃべっちゃダメだって言ったでしょ！俺は言ってないけれど！
「食べました」
「あのね、訊きたいことがあって」
「はい」
「・・・高地」
「・・・」
「なんかあった？」
「何もないですよ」
・・・不自然すぎる空白の後で、そう言った君の目線が逸れた。
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【you】
「Aちゃん、サマパラに来てたでしょ」
先輩が言うには。
私が客席に居ることに気がついていて。どう考えても私が自らチケットを取ることはないだろうし、知り合いから貰うといっても。
「俺か高地しか思いつかなくて。でも俺じゃないもんね」
そこで、たまたま数日後にこーちさんと食事に行く約束をしてたから、私のことを訊いてみたのだけれど。
「高地は“知らない、人違いじゃない？”って。でもさ、流石にAちゃんは見間違えないから」
私を見つめながら言葉を続ける先輩。
「自分の舞台に女の子呼んじゃうヤツも実は結構居るんだけどね。でもアイツそういうの全くしなかったから」
彼女とラブラブだったくせにねって茶化す先輩。
「でも、夏前くらいかな？別れたって人伝に知って」
「・・・」
「それであのサマパラだから、もしかしてAちゃんが絡んでる？とか。いや、疑ってるとかじゃないんだよ？ちょっとだけ考えちゃったりして」
・・・なんとなくだけど。私にはこーちさんがはぐらかした理由が解る。
私を呼んだことを認めたら、そうなった経緯を訊かれるのは自然な流れ。
だって先輩が知っている私とこーちさんは、期間限定のアルバイトでたまにすれ違うくらいな関係なのだから。
後ろめたさがあるから言えない。それは私も同じだから。
「先輩が見たのは多分私です」
「うん」
「サマパラには行きました」
「うん」
「それだけです」
先輩との間に気まずい沈黙が流れる。
「解った、もう訊かないから」
「・・・ごめんなさい」
「謝らなくていいから」
「・・・はい」
「どっちにしても、きっかけ作っちゃったの俺だもんね」
・・・赤ペンで描かれた先輩のサインを思い出す。
「大人同士なんだし俺がどうこう言える立場じゃないけど」
“Aちゃんのことも高地のことも好きだから・・・どっちにも傷ついてほしくないんだよね”
むしろくっついてくれてもいいんだけど？と微笑む先輩は、普段通りの先輩だった。
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作者名：tamami | 作成日時：2020年4月21日 10時
