夢の後先 (ページ16)

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atosaki 16 ページ16

【you】

「・・・健人？」

目の前の人が呟いた言葉。空耳なんかじゃない。確かにそう聴こえた。

戻ってきた地図をもう1度見る。先輩こと中島健人が勝手に描いたサイン。

・・・私の目にはタダのぐっちゃぐちゃに崩した英単語にしか見えないのだが。

でも・・・見る人が見れば解るモノ。

こんな無造作に持ち歩いてたら、それこそ落として誰かに拾われてたりしたら、相当マズいのではなかろうか？

・・・好きで持ってる訳じゃないし、サインは先輩が勝手に描いたんだけど。

「あの」
「はっ、はい！」
「それ、本人が描いたんですか？」
「はい」
「・・・へえ、珍しい」
「大学が一緒で！あの、授業も一緒で、別に描いてくださいって言った訳じゃ」

そこまで一気に話すと、今度は小顔兄さんが慌てだして、双方でごめんなさいを連呼というおかしなことになってしまった。

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【？】

健人と授業が一緒だったという女の子の目的地は、俺の通っていた小学校区内の学童保育で。帰り道からそんなに離れずに行けるから、近くまで送り届けることにした。

「この赤い線も健人が描いたんですか？」
「はい、この駅に知り合いが住んでて、近道だからって」

そうだね、知り合いつまり俺が住んでるね。

「多分、知り合いって俺のことなんですけど」

この道はね、もう5年くらい前に行き止まりになってるんですよ？と言ったら

「はあ？クソっ！中島健人に騙された！」

・・・あのね。世間に誤解されそうなことを叫ばないでくれるかな？

それにしてもこの子面白い。そして・・・可愛い。

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【you】

「あの赤い屋根の建物がミドリだから」

赤い屋根のクセにミドリなんだ。

「ですよね？俺もちっちゃい頃から同じこと思ってました」
「え？やだ、声に出てました？」
「はい、なかなかの声量で」

やだもう、恥ずかしい。コレもアレもソレも全部先輩のせいにしてやる。

っていうか、もしかしてこの人も

「あの、つかぬことをお訊ねしてもいいですか？」
「はい。俺も一応アイドルです」
「ですよね」

・・・早押しクイズ並のフライング回答、しかも正解。

「すとーんずのこーちって調べてみてください」

とびっきりのアイドルスマイルを残して、去っていった「すとーんずのこーち」さん。ちょっとドキっとしちまったぞこんちくしょう！

それにしても、アイドルってこんなにゴロゴロ転がってるモノなのだろうか？やっぱりアイドルって暇なのか？

・・・帰ったら先輩に報告しとこ。