悪魔で、ヒーロー (ページ7)

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悪魔　６ページ7

緑谷side

「君が危険を冒す必要は、全くなかったんだ！！」

そう僕を叱るヒーローに、もどかしさというか、やるせなさというか、頭では理解しつつも、腑に落ちない念を抱く

それでも今は少しでも早くオールマイトに謝りたかった。

こっ酷く叱られた後に、踵を返すヒーローを見送る中、突然肩を指先で叩かれ、僕は反射で振り向く

すると僕やかっちゃんよりも背の高い、蛇を首に巻いている人が、背筋良く立っていた
サングラスをかけていて、体格もよく、黒髪に赤眼という顔がとても整っていた

「え、えと……」

『失礼、これは君のでしょうか？』

その人は見覚えのあるノートを僕の目の前に差し出した
ボロボロで爆破された形跡のあるノートに、確かな既視感と愛着を思い出した

「あっ… 僕のノート……！拾ってくれたんですか…！
わざわざありがとうございますっ…！！」

丁寧に手渡してくれたそのノートを有り難く受け取り、僕は頭を下げながら感謝の言葉を並べた

そういえばいつのまにか手元から消えていた気がする
せっかくオールマイトにサインも書いてもらっていたし、本当によかった……

あからさまな安堵を見せつけてしまった僕に応えるように、その人は控えめに口角を上げた。

「っ……」

あれ…なんか……
さっきまで普通に喋っちゃってたけど、この人………

「(どこか儚げで、不思議な感じがする……。)」

淡い雰囲気、彼の周りだけがどこか別世界のように思えた

『…自分達は何もしてないのに、酷いですね。所詮そういう奴らは何処の世界でも同じですか…』

「へ…？」

し、しまった……！

つい凝視していた自分を非難するも、己の不躾な行動が相手に露顕されていないかと、今度は慎重に彼を注視する
然し幸運なことに、この人は僕から顔を背けていた

その事実に安堵し、硬直していた体を緩ませるも、今度は顔を背けた事により首に巻き付いている蛇と目があい、また硬直してしまった

「え…？えっと……」

その言葉の意味を理解出来なかったけれど、何となく僕もその人の見る方向へと顔を向ける

そこには先程僕を叱って行ったヒーロー達の姿があり、やっと彼の言いたいことが絞り出されてくるものの、どう返せば良いのか判然とせずに言葉に詰まる。取り付く島もない

すると困惑する僕を見兼ねたのか、呆気なく先程のヒーロー達と同様に踵を返していった

「あっ……」
彼の姿はもうどこにもなかった