悪魔で、ヒーロー (ページ6)

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悪魔　５ページ6

風は竜巻のように渦を巻いて、空高く登り、雲を、空を突き抜ける

煌々と燃え盛っていた炎は、ロウソクの火を吹き消すかの如く容易く消し飛ばされ、徐々に雨雲が空を覆った

これがNo.1ヒーロー、オールマイトの力────。

周囲の反応を見るに、先程の強風はあの人が放った攻撃によるものらしい

思い返せば、あの人の声と思わしき野太い掛け声のようなものが聞こえてきていた気もする

ポツリ…

ふと、頬に冷たい何かが当たった

ポツリポツリと、それは徐々に嵩を増し、絶え間無く降り注いでくる

その場にいた皆が皆呆気にとられ、唖然とした静寂の中、僕は空を見上げ上昇気流だとか、雲を掬ったとかいう市民やヒーローらの発言を、鼻で笑った

『こんなことで驚くのか…』

野次馬特有のざわめきから歓喜喝采とし、これでもかと言う程に、中心に威風堂々と立つオールマイトへ歓声を送る市民たち

それらを喧しく思うも、力強く拳を振り上げる平和の象徴の後ろから覗いた、ヘロヘロに伸びきったもう一人のヒーローを見つめていた

ヴィ「なぜ、我々ばかりがこんな扱いを受けるんだ……ヒーローめ」

捕まったヴィランが顔を歪ませ、つぶやいていた

『クスッ、馬鹿だな。個性の応用次第ではあいつもうまくできたのに、考えられなかった頭を恨めばいいものを…』

俺は、ヴィランの歪んだ顔に興奮し、口角が上がっていた

『……ペプ、大丈夫かい？』

首に巻き付いていたペプを撫で無事を確認する

その拍子で手に持っていたノートの存在を思い出し、既にボロボロではあるものの、これ以上雨にうたれ濡れないようにと考慮した

次々と野次馬らが帰路につく中、僕は我が物顔で警察に答礼するヒーローらを一瞥し、本物の英雄ヒーローへと歩み寄る

まあそれも、厚顔無恥では飽き足らなかったらしいヒーローらによって、邪魔されてしまったのだが…