悪魔で、ヒーロー (ページ5)

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悪魔　４ページ5

そこを今朝ニュースで見たヒーロー達がどうにか間一髪で対応しているものの、現状押されていた

ヘドロの体内から見え隠れする学ランを着た子供が、それを物語っていた

何で炎が燃え盛っているのかと思えば、あの人質にされている奴が踠いてのことだとか

そういう個性なのだろな
そのうえなかなかに強い個性のようだ

まるで地雷原と化した戦場そこに、個性が合わないだとか、救助や消化で手一杯だとかで、この場にいるヒーロー皆手が付けられない状態だと、まさかのヒーロー達自身が解説していた

なんとも情け無い姿だが、それ以上にどうしようもなくなったのか
なんと、優先して救助すべきであろう人質を後回しに、被害を抑えることに専念するとか言い出したヒーロー達

『へぇ…
あれが敵ヴィランに英雄ヒーローねぇ…』

『ハッくだらねぇな』

そんな"仕方ない"で片付けられる人質あいつは、納得出来ないだろうな

ダッ

『……ほぉー…』

「馬鹿ヤロー！！
止まれ！！止まれ！！！」

そんなヒーロー達の制止の声を聞き流し、僕は茫然とした声を洩らす

"唖然"
そんな言葉が今の僕にはぴったりだ

『あいつの方がこの場ではヒーローだな…』

予想外過ぎた緑頭の行動に反応が遅れたうえ、いざリアクションしようにも、目立つためどうすることもできなかった
そんな絶賛というにはあまりに味気ない反応をしてしまった

だがしかし、今回ばかりは少し勝手が違っているのもまた事実

人質にされたあのガキを、同じガキが"たった一人"で、救わんとして飛び出す姿は、まさに英雄ヒーロー

魂の感じからしても、あいつは"無個性"の筈なのに……

"君が、助けを求める顔してた"

……あぁ。あれが"本物の正義"か…

無個性のくせして、ヘドロの中から人質を必死に引き離そうと尽力するあいつの姿に、まるで身体中に電撃が走ったかのような衝撃を生身で感じていた

すると突然、横しま風が僕の頬を掠ったかと思えば、今度は真正面から、凄まじい強風が吹き抜けてきた
普通の人間ならば立っているのがやっとのことだろう

反対方面では、例のMt.レディが身を挺して市民を強風から庇っていた

吹き荒れる風に両腕を前にして風をふせいでいると、側にいたあいつのボロボロのノートが視界の端に転がってきた

視線が捉えるや否や、風をふせぎながらノートを手に納めた

吹いた風に脚元がおぼつき、再度踏ん張り耐えた

強風を耐え忍んだ後…────

筋骨隆々

そんなものが視界一杯に映り込んだ