悪魔で、ヒーロー (ページ4)

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悪魔　３ページ4

季節は、春

町に降りてみれば、桜が咲き乱れていた

…思えば季節の変わり目とか暮らしの変化とか、今まで視界の端に追いやっていたような気がする
気付けばいつも季節は死んでいた。

特に興味なんてなかったしなと、それがどれ程盲目なのかも知らずに、オレは掌に乗った花弁をただじっと見つめた。

『結構賑わっているな… ペプ落ちるなよ』

首に巻き付いているペプにそう言い、歩き出した

すると唐突に、何処からか凄まじい威力を持った爆発音が聞こえくる

またこの世界で言う「ヴィラン」とか呼ぶ奴が騒ぎを起こしてんのかと呆れたが、どうやら今回は勝手が違うらしい
此処からでも悲鳴や雄叫びが、途絶えることを知らずに聞こえてくる

どうしてか好奇心に近い興味が湧いてきて、自分でも不気味に口角が上がるのが分かった

商店街を丸々包み込み、空高く渦巻いていく煙を頼りに、先程よりも弾んだ歩みを再開させる

この件に限って何故こうも自らに行動を起こしたのか
理由としては、オレがこの世界に来てから一度も"敵ヴィラン"という存在を、この目で視認した事が無かったからかもしれない

城では一日中引きこもって、設備されているパソコンからこの世界のことについて手当たり次第に調べていたし、金がないので城の宝物庫の財宝を売ったり、株や投資で効率的に金を稼いた

そんな閉じ籠った生活には正直飽き飽きしていたし、"異世界"だからこそ抱ける好奇心がある
実際に身を持って感じる新感覚を糧に、僕は歩調を早めた

敵ヴィランのいる所には、高確率でヒーローもいる

ヒーローの方が見る価値は高いだろうし、何にせよ、この高揚感は、もくもくと立ち昇る煙の根本に辿り着かない限り、消えはしないだろう

次第に鼓動と爆発音の区別がつかなくなってくる

着々と近づいてくる煙臭い匂いに、錯乱とした人々の声。
独特の煙臭が鼻に纏わりついた頃には、もう既に現場に到着していた

『なんだあれは…』

田等院商店街と言うらしい商店街の通りの先には、緑色のヘドロみたいな物体が、奇妙な動きをしながらその場に断固として留まり、好き勝手に暴れていた

炎はヘドロを中心に取り囲むようにして燃え盛り、硝子は突然割れ、建物には彼方此方と亀裂が入り今にも崩壊しそうだ
立て掛けられていた看板が容赦なく墜落してきては、まだ救助が行き届いていない力の無い市民達を襲う

まんま戦場だ

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