悪魔 15 ページ16
「………彼は…戦闘に慣れ過ぎている。」
これが、オールマイトが画面越しに見た少年の第一印象
こんな恐ろしいことがあっていいものかと、オールマイトは悲嘆した
骨が浮き彫りになったその貧相な顔を歪め、懊悩煩悶する
"平和の象徴"というものが存在し、悪行を抑圧したこの現代社会で、彼のような子供が、見るからに戦闘慣れしているなど、不自然極まりない
故にオールマイトは怪訝した
それに加え、この圧倒的威力──。
オールマイト自身、自分がこの少年と戦って勝つことができるのかと思考していく
雄英がこんな人材を見過ごす筈がないと確信している
本来ならば推薦入学者候補に回ってもおかしくない実力だ
「…校長。あの少年がどんな個性の持ち主か、存じ上げておりませんか……？」
「んー、それがね。不思議なことに、彼の願書ではあくまで"血を操る個性"を主張していたのさ。
それに僕自身、彼のような強い個性力の持ち主を、野放しにする筈がない…
ましてや、同じような個性のブラドキングよりも強い力を有しているからそれなりに形跡があると思って調べてみたら、通っていた小中学校共に不明だったり。」
「義務教育を放棄、なんて事は流石にないと思うけど………
それ以前に彼の書類は、意味を成していない程に空白だらけだ。」
「そ、そうですか…。」
淡々と述べる根津の返答に、オールマイトはあからさまに肩を落とし落胆する
確かに個性を駆使する姿も、外見から見て取れる変化も異様だが、慮外にも個性云々より挙げ句の経歴不明ときた
生い立ちが不明などと、本来表立った社会で普通に生活しているのであればそんな結果にはならない筈。
即ち彼にそぐわない戦闘能力の訳が、裏の方に隠されているとも比喩できた
オールマイトの中で蟠った疑念は解けるどころか余計に絡まっていく
それは無論、根津校長も同じだったようで
「簡潔に言えば戸籍不明の状態に限りなく近い。本当はこの時点で不合格……とまではいかなくとも、こちらも対応が難しいね。」
「これ程の凄まじい力、是非雄英こちらに招き入れたいところさ！
…その為にも、この子の事に関しては、後で詳しく調べてみる必要がありそうだ。」
一方──……
「真価が問われるのは…」
「ここからさ！！」
そんな外野の談話を最後に、教師は皆画面に再注目し一旦その口を噤んだ
「………。」
その奥では、とある教師が1人、賞賛された少年のみをじっくりと見据えている
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作者名：もっちりパンダ | 作成日時：2024年3月18日 9時
