#44 荒波起こす助け舟 ページ44
「じゃ次、どーぞ！」
「……あっ」
目眩く筋肉ワールドに迷い込んでボーッとしていたところを、海人くんの声に揺さぶられてハッとする。
…しまった、すっかり忘れてた。
3人が自己紹介をしている間に自分が言うことを少しは考えておこうと思ったのに、頭の中は空っぽだ。
強いて言えば、筋肉のことがぽつりとあるだけ。
「えっと…」
「名前は？」
もう知っているはずの永瀬くんが、誘導するように問いかけた。
…助かる。何か言わなきゃって思えば思うほど頭の中は真っ白になっていって、自分では何も言えなくなってしまうから。
「長瀬…Aです」
「え？そこ苗字一緒なの？」
「すご！ナガセナガセだね」
「そうなんよ。漢字は違うんやけどな」
……で、どうしよう。
みんなのリアクションが済んでしまえば、私はまた言葉に詰まるのだ。
「そんで？なんか、好きなもんとか」
それを速やかに察したみたいに、永瀬くんはまた私に問う。
「えっと……好きなもの？んー…」
“猫”
右耳が、こそっと揺らいだ。
ダイレクトに頭の中に入ってくるような、永瀬くんの囁き声。
…これ、私の自己紹介というより永瀬くんの自問自答だ。
だけど正直助かった。
“好きなもの”なんていきなり聞かれても、私は何の答えも持ち合わせていなかったから。
「あ…猫、好きです」
「猫！俺も大好き」
…で？この次私、何を言ったらいいんだろう。
私は特別ゲームが好きなわけでも絵が上手いわけでもなく、そして筋肉質でもないのだ。
“猫語が分かります”
耳打ちがまた、天の声みたいに降ってくる。
これじゃあ私、永瀬くんの思い通りに喋らされる機械仕掛けの人形みたい。
いや、すごくありがたいんだけど。
「猫語が分か………猫語？」
「え、喋ってたやん。この前猫と」
「あっ…あれは」
おひとり様を極めた校舎裏で、唯一の会話相手がまさかの猫。
…そうだ。それを見兼ねて声を掛けてきてくれたのが、この人だった。
「あれは、その…違くて」
一気に顔が熱くなる。
だってあんなとこ、誰に知られたって恥ずかしい。
もう、助けてくれるって言ったのに。
いや、もう既に結構助けてはくれたけど。
今のところ、これに一番困ってる…！
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もちこ(プロフ) - yimmさん» はじめまして！コメントありがとうございます。お楽しみ頂いているようで何よりです…！ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月25日 17時) (
レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - もちこさん、はじめまして☆お話楽しく読ませていただいてます。この後の展開を妄想するとなんかだかドキドキ(笑)更新頑張ってください。 (2020年10月25日 7時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - しおりさん» コメントありがとうございます。主人公可愛く書けててよかったです…！これからも是非色んな想像をしながらお楽しみいただけると嬉しいです、よろしくお願いします！！ (2020年10月23日 17時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 欲しいスタンプ俺が買ったるって何語ですか…？永瀬さんの妹になって買って貰いたい！それからなんですか！主人公ちゃんの可愛さ！！永瀬の妹って立場利用して主人公ちゃんと付き合いたい！ (2020年10月22日 21時) (レス) id: 199b427b1e (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます！そう言って頂けてとっても嬉しいです。ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月20日 22時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちこ | 作成日時：2020年10月13日 19時
