#43 目先に散る淡火花 ページ43
_______バチリ。
まるで、淡い火花が散ったようだった。
その瞼が上がって露わになった彼の瞳が、私の両眼を1ミリ漏らさず捉えてしまう。
「…あれ？」
容赦なくぶつかる視線と視線。
逸らしたいのに逸らせなくて、その瞳を初めてちゃんと見た。
おっきくて綺麗で、まるで吸い込まれてしまいそうになる。
サラサラの前髪は瞼にかかって、その真下から私を捉える眼差しは優しさそのものだった。
「固まっちゃった。おーい」
ぷっくりした唇の隙間から白い歯が覗いて、キョトンの顔が笑顔に変わった。
いじらしく首を傾けて覗き込んでくるその笑顔に、どこか既視感を覚える。
…あ。分かった。
遠い昔に飼ってた大型犬。まん丸な目と人懐っこい表情が、何故だか不思議とうっすら重なる。
「この字やで、Aちゃん」
平野…くん、の顔を横切ったのは、隣の人のスマートフォン。
そこには小さく「耀」の文字。
…なるほど。やっと分かった。
平野紫耀。“紫耀”で“しょう”、か。綺麗な名前だ。
「俺のことは好きなように呼んでいーからね」
永瀬くんが私たちの間に差し込んだスマホを引けば、平野くんの近すぎた顔はやっと遠のいて、代わりに左手のこそばゆい感覚が戻ってくる。
私よりずっと、あたたかい手だった。
それは掌をなぞった指先からですら、しっかりと感じてしまうほどに。
「紫耀、自己紹介は？」
「んーなんだろ…そんな言うことないんだけど」
「まぁ紫耀はめちゃくちゃ筋肉質だよね」
「あ！そう俺、こう見えて意外とついてるの」
そう言って平野くんがシャツを捲ろうとするものだから、私は慌てて顔を伏せた。
き…筋肉？がどうとか、よく分からないけど。
なんかそういうの、見ちゃいけない気がする。
特に、私みたいな人間は。
「おー相変わらず凄いね」
「でしょ？あと腕とかも…すげぇ筋肉質でさ、歯ブラシするだけですぐ筋肉ついちゃうのここに」
彼が今度は腕の裾を捲るような気配を感じて、ふと顔を上げた。
…よかった。お腹、もうちゃんと隠れてる。
「歯ブラシで筋肉…？」
「そうそう。こう、ゴシゴシって動かすじゃん。その動きがダメなのよ。筋肉になっちゃって」
「紫耀、それでこないだ電動歯ブラシに変えたんよね」
……いや…え？
説明を聞いても、いまいちよく分からない。
だって、そんなんで筋肉つく人いるの？
よくは分からないけど……とりあえず、びっくりだ。どうやら世界は広いらしい。
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もちこ(プロフ) - yimmさん» はじめまして！コメントありがとうございます。お楽しみ頂いているようで何よりです…！ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月25日 17時) (
レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - もちこさん、はじめまして☆お話楽しく読ませていただいてます。この後の展開を妄想するとなんかだかドキドキ(笑)更新頑張ってください。 (2020年10月25日 7時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - しおりさん» コメントありがとうございます。主人公可愛く書けててよかったです…！これからも是非色んな想像をしながらお楽しみいただけると嬉しいです、よろしくお願いします！！ (2020年10月23日 17時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 欲しいスタンプ俺が買ったるって何語ですか…？永瀬さんの妹になって買って貰いたい！それからなんですか！主人公ちゃんの可愛さ！！永瀬の妹って立場利用して主人公ちゃんと付き合いたい！ (2020年10月22日 21時) (レス) id: 199b427b1e (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます！そう言って頂けてとっても嬉しいです。ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月20日 22時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちこ | 作成日時：2020年10月13日 19時
