#35 澄んだ瞳と真一文字 ページ35
「開いてるかな」
彼の隣でせこせこ足を動かすこと、数分。
着いたのはこじんまりしたアパートの1室。
いよいよドアノブを目の前にして、永瀬くんはそっ、とそれに手をかける。
「開いた！」
静かに静かに手前に引けば、カチャ、と現れるドアの隙間。
永瀬くんは私だけに聞こえるような小声でそう言って、笑っていた。
「行ける？…あいや、一旦落ち着こか」
一方私の口は真一文字。
それを見て、彼は開けかけたドアを慎重に閉める。
「心の準備必要よね、こう言うの」
「う…すみま……あいや、えと」
「ふは、謝るの完全にクセなっとるやん。だいじょぶ？」
肩にポンと手を置かれて、屈んで表情を覗き込まれる。
相変わらずの真一文字はピクリともしないまま、視線だってしどろもどろ。
だけど一思いに、その視線をグンと上に上げた。
「あ…あの」
ピタリと合った澄んだ瞳は、相変わらず1mmもブレない。
「ん？」
「…隣に、いて欲しいです」
ふふって、優しく笑う声。
こっちからしたら、ちっとも笑えない。
これは真剣な頼み事だ。
「うん、おるよ。ずっと隣におる」
けど、その後の言葉は力強い。
それから私の目を真っ直ぐに見る眼差しも、ギュッと力を込められた肩の手も。
強くて、優しくて、ホッとする。
「Aちゃんが困ってそうやったら、すぐ助け舟出すし。あいつらが変なこと言ったら、おれがぶっ飛ばすからね」
「ぶ…ぶっ飛ば…？」
「よし、行こか！」
すくっと背筋を正した彼は、さっきのドアノブをまた引いた。
今度は堂々と、早く、強く。
「紫耀、来たでー」
奥の部屋に向かって、永瀬くんは声をかけた。
“彼が私以外の人に向かって喋っている”という事実だけで、またぐんと緊張が込み上げてくる。
「おっ」
半開きの薄いドアの向こうから聞こえてきたのは、ハスキーボイスの短い一声。
その次の瞬間、“バンっ”と勢いよくドアが開いて、体が跳ねた。
「来たね来たね！」
「いらっしゃーい！！」
この短い距離を、何故か小走りで向かってくる騒がしい2人。
さっきのお茶の意味は何だったのか。
もうすっかりカラカラになってしまった喉で、ゴクンと唾を飲み込んだ。
「うっわ、なんか、凄いね絵面が」
「本当だよ。俺も紫耀もまだ女の子連れてきたことないのに」
…あぁ、どうしよう。
結局、言葉は見つかっていないんだった。
なんて言えば良い？
…考えろ。______考えろ、私。
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もちこ(プロフ) - yimmさん» はじめまして！コメントありがとうございます。お楽しみ頂いているようで何よりです…！ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月25日 17時) (
レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - もちこさん、はじめまして☆お話楽しく読ませていただいてます。この後の展開を妄想するとなんかだかドキドキ(笑)更新頑張ってください。 (2020年10月25日 7時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - しおりさん» コメントありがとうございます。主人公可愛く書けててよかったです…！これからも是非色んな想像をしながらお楽しみいただけると嬉しいです、よろしくお願いします！！ (2020年10月23日 17時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 欲しいスタンプ俺が買ったるって何語ですか…？永瀬さんの妹になって買って貰いたい！それからなんですか！主人公ちゃんの可愛さ！！永瀬の妹って立場利用して主人公ちゃんと付き合いたい！ (2020年10月22日 21時) (レス) id: 199b427b1e (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます！そう言って頂けてとっても嬉しいです。ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月20日 22時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちこ | 作成日時：2020年10月13日 19時
