#33 トモダチ論 ページ33
「あ、あの!本当に、大丈夫なので」
正直、彼の言う通り喉は緊張でからっから。
だけど買ってもらうのなんて、流石に申し訳ない。
ただでさえ彼に無駄な交通費を払わせているわけだし、お菓子を押しつけてしまったのだって私だし。
それに飲み物1本買えるくらいの小銭、私だってちゃんと持ってる。
「えーから甘えとけ、友達やもん。おれ」
カチャカチャと小銭を探しながら、軽く振り返ってそう一言。
ベンチから見える永瀬くんの横顔は、笑ってる。
硬貨を数枚入れた音がした後、“んー、どれがいっかな”と言わんばかりにポッケに両手を突っ込んでシンキングタイム。
そして彼がギュッとボタンを押せば、ガコンと出てくるその飲み物。
…あーあ。本当に買ってもらっちゃった。
「…え!この自販機当たり出るやつや」
ピピピピ、という忙しない音に、永瀬くんは釘付けになってる。
同じ数字が4つ揃えばもう1本。そんな仕掛けに夢中になるなんて、意外と子どもっぽくてちょっと可愛い。
「あー…ハズレ」
…うん、だと思った。
だってあの手の自販機って、当たったこと1度もない。
「ハイこれ」
永瀬くんはこっちに戻りながらペットボトルの蓋を開けて、それを私に差し出した。
色々あるお茶の中でも、私が1番好きなとこのやつ。
“もしかして、永瀬くんもこのお茶が好き?”
そう聞ける私は、当然ながらここにはいない。
「あ…ありがとう、ございます。すみません」
隣にポスン、と腰掛けた彼の風がくすぐったい。
…それから、また不意に気付いてしまった。
やっぱり私、彼の匂いが好きだ。
「だー!また謝っとる。おれには気遣わなくてええんやって」
「でも…」
「でもやないっ!ペコペコしたらあかん、友達やろ?おれら」
…友達、友達って。
さっきからやたらと言ってるけど…もしかして私と友達になれたの、ちょっぴり嬉しかった?
…なんて自惚れてしまうのは、私の隠れた悪いクセ。
画面を埋め尽くすほど友達の多い彼が、そんなことで喜ぶわけがない。
「あと、敬語も使わんでええよ。…ま、それは徐々に慣れてったらね」
…こくん。
返す言葉が分からないから、とりあえず首だけで肯定。
また沈黙になるのが怖くて、蓋の緩んだそのお茶をとりあえず喉に流し込んだ。
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もちこ(プロフ) - yimmさん» はじめまして!コメントありがとうございます。お楽しみ頂いているようで何よりです…!ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります! (2020年10月25日 17時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - もちこさん、はじめまして☆お話楽しく読ませていただいてます。この後の展開を妄想するとなんかだかドキドキ(笑)更新頑張ってください。 (2020年10月25日 7時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - しおりさん» コメントありがとうございます。主人公可愛く書けててよかったです…!これからも是非色んな想像をしながらお楽しみいただけると嬉しいです、よろしくお願いします!! (2020年10月23日 17時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 欲しいスタンプ俺が買ったるって何語ですか…?永瀬さんの妹になって買って貰いたい!それからなんですか!主人公ちゃんの可愛さ!!永瀬の妹って立場利用して主人公ちゃんと付き合いたい! (2020年10月22日 21時) (レス) id: 199b427b1e (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けてとっても嬉しいです。ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります! (2020年10月20日 22時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もちこ | 作成日時:2020年10月13日 19時