#28 春らしからぬ思いつき ページ28
それは勿論、私も例外じゃなく。
あれだけ人嫌いだった私がこんなに人と話しているのは、紛れもなく彼の力だ。
「はい、多分。焼き菓子…？だと思うんですけど」
「そかぁ、おれ自分じゃこういうの買わへんからめっちゃ嬉しい。ほんまありがとうな」
…なんか、照れる。
ありがとうとか、結構言われたことないし。
こんな菓子箱を渡してきたお母さんをずっとお節介だって思ってたけど、今は絶賛グッジョブだって思ってる。
「け…けど、そんなに渡されても食べ切れませんよね。それに明日まで…とか。すみません」
「いや？別に食べようと思えば食べれるよ、おれ男やし」
「…えっ」
「おぉい、何やその怪訝そうな目は。細いから食わんとか思ってるんやろ。違うのおれめっちゃ食うの。こう見えてすげえ食うのよ」
そう言われてから、彼の身体を改めてマジマジと見る。
確認するまでもなく、細い体。脚も腕もウエストも、下手したら折れちゃうんじゃないの…ってくらい、細い。
けどその分、カクっとした輪郭も浮き出た鎖骨や首筋も、骨格の骨張ってる所なんかも……やけにちょっと、色っぽくて。
…わぁ、なんて小さな一声を、心の中で漏らす。
トクンという心臓の響きと一緒に。
「…あ。おれ、いいこと思いついた」
箱が入った紙袋を両手で持って見つめながら、彼は静かにそう呟く。
ちょっとニヤけている表情と、きゅっと上に上がった口角。
伏せたままの瞼に映える長い睫毛が、やけに綺麗だった。
「それ、定期やんな？」
私のパスケースを指差して、彼は言う。
さっき彼と並んで改札を通ったICカード。
勿論定期だ。買い換えるのが面倒だから、高かったけど1年分まとめて買った。
「あのさ。もっかい学校の方戻って、一緒に紫耀んち行かへん？んで、4人で食べる」
「……ん？」
…あぁ、春のように穏やかな人だと思えば、また突拍子もないことを。
私みたいな人間が、あの賑やかな3人組にしれっと混じれる訳がない。
「あいつら甘いもんめっちゃ好きやし馬鹿みたいに食うから、多分瞬殺よ。これ」
「いや、あの…な、永瀬くんだけで、行ってきてください。私は大丈夫なので」
彼の作戦は、至極真っ当なものだと思う。
食べ盛りな男子3人が集まれば、きっとこの箱の中身は一瞬で無くなってしまうんだろう。
だけどそこに、無口で人見知りで俯きがちな私がポツンといたら。
…いや、いやいや。あまりにも浮きすぎる。
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もちこ(プロフ) - yimmさん» はじめまして！コメントありがとうございます。お楽しみ頂いているようで何よりです…！ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月25日 17時) (
レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - もちこさん、はじめまして☆お話楽しく読ませていただいてます。この後の展開を妄想するとなんかだかドキドキ(笑)更新頑張ってください。 (2020年10月25日 7時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - しおりさん» コメントありがとうございます。主人公可愛く書けててよかったです…！これからも是非色んな想像をしながらお楽しみいただけると嬉しいです、よろしくお願いします！！ (2020年10月23日 17時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 欲しいスタンプ俺が買ったるって何語ですか…？永瀬さんの妹になって買って貰いたい！それからなんですか！主人公ちゃんの可愛さ！！永瀬の妹って立場利用して主人公ちゃんと付き合いたい！ (2020年10月22日 21時) (レス) id: 199b427b1e (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます！そう言って頂けてとっても嬉しいです。ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります！ (2020年10月20日 22時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：もちこ | 作成日時：2020年10月13日 19時
