#24 見えないネジの行方は ページ24
さっきの“ながせ”の件でもそうだったように何かに驚いているのか、ただ単につまらないと思っているのか。
それとも…私、何かしちゃった?
一体、正解はどれだろう。
「…3階です」
「……ほぉーん」
さっきからその“ほぉ”っての、なん………何?
永瀬くんってコロコロ表情が変わって意外と分かりやすいなーなんて思ってたら、急に難しい。
だって彼が今何を考えているのか、さっぱり分からない。
けど彼の心境に言及する勇気はなくて、エレベーターの中でまた気まずい沈黙。
勇気がなくても何か話しかけなきゃとは思ったけれど、永瀬くんはとうとう腑抜けのフー子みたいな顔になってしまって、ただぽけーっと突っ立っていた。
…さっき一緒に写真を撮ったアイドルスマイルの彼は、もうどこにもいない。
「あの………?」
心の中の私は、完全にプチパニック。
この高身長で細身な彼を、これ以上どうしたらいいのか分からない。
「ここ、なんですけど。私の部屋」
「………」
…これは困った。
どこかのネジが、どうやら1本外れてしまったらしい。
きっと、目に見えないくらい小さな小さなネジだ。
だって、この私が珍しく彼のぽやぽやした顔をずっと見ていたけれど、ネジが飛んでったところは見えなかったから。
「な…永瀬くん」
少しでもこの壊れたロボットを動かそうと、恐る恐る名前を呼んだ。
ネジはないけど、そのネジ穴に埋める何かをどうにか用意しなくちゃならないと思って。
「…ん?あぁ、いやぁごめんね」
…あ、動いた。
口角は下がりっぱなしだけど、その澄んだ茶色い瞳はキョロキョロと左右に動き始める。
「あの…どうか、しましたか」
「んまぁ、何というか…」
「何と…いうか?」
「ごめん、ちょっと電話さして」
明らかに何か言いたげな顔。
その“言いたげなこと”を引き出すのはちょっと怖いけど、ここまで焦らされると逆に気になって仕方がない。
「ど…どぞ」
けど“電話の前に早く言ってよ”なんて気軽に言えるわけもなく、私は彼の電話を促した。
“ごめんね”ともう一度呟いてから、スマホを耳へ。
スマホ越しにコール音らしき音声が聞こえたけれど、通話の相手は分かるよしもない。
今分かっているのは、突然ぼーっとしちゃった永瀬くんが、ぼーっとしたまんま、ぼーっと誰かに電話をかけ始めたってことだけだ。
「…あーもしもし、紫耀?」
飛び出たのは知ってる名前。
ハスキーボイスのあの人だ。
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もちこ(プロフ) - yimmさん» はじめまして!コメントありがとうございます。お楽しみ頂いているようで何よりです…!ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります! (2020年10月25日 17時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
yimm(プロフ) - もちこさん、はじめまして☆お話楽しく読ませていただいてます。この後の展開を妄想するとなんかだかドキドキ(笑)更新頑張ってください。 (2020年10月25日 7時) (レス) id: 72bd3737bf (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - しおりさん» コメントありがとうございます。主人公可愛く書けててよかったです…!これからも是非色んな想像をしながらお楽しみいただけると嬉しいです、よろしくお願いします!! (2020年10月23日 17時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
しおり(プロフ) - 欲しいスタンプ俺が買ったるって何語ですか…?永瀬さんの妹になって買って貰いたい!それからなんですか!主人公ちゃんの可愛さ!!永瀬の妹って立場利用して主人公ちゃんと付き合いたい! (2020年10月22日 21時) (レス) id: 199b427b1e (このIDを非表示/違反報告)
もちこ(プロフ) - mさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けてとっても嬉しいです。ご期待に添えるようこれからも更新頑張ります! (2020年10月20日 22時) (レス) id: 03d75cb96c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もちこ | 作成日時:2020年10月13日 19時