ヒーロー紅一点物語

二十歳 ページ29

今日も今日とてゲームをしながら眠気に負けて寝落ちをしていた。

拠点でゲームをすると、どうしても安心感故に眠くなるのはどうにかしたいものだ。

心地よく窓から漏れる日差しを浴びてぬくぬくしていると、同期の小柳ロウがダルそう向かってくる。


「お前間に合うの？」

「は？」


未だ覚醒しきってない脳味噌を回転させてロウの言葉を反芻する。


「成人式、今日じゃねぇの？」

「…せ、いじんしき？」
　








ヴィランが昼夜問わず悪事を働くように、ヒーローの任務に朝も昼も関係ない。

昨晩の任務で深夜に帰ってきた叢雲は拠点の仮眠室に体を沈めスヨスヨと睡眠にふけっていた。

するとぐっすりと寝ていた叢雲を伊波が叩き起こす。

叢雲はその強引さに眉間に皺を寄せ、肩までかけていた毛布を頭まですっぽり埋めた。

夢は最高潮、今にも空へ羽ばたけそうなタイミングである。


「カゲツー！起きて！！」

「なんやこんな朝から…」

「今日成人式でしょ！？早く起きないと間に合わないよ！」

「…成人式？」


叢雲は寝ぼけ眼を丸め、頭に疑問符を浮かべた。


「そうだよ、1月8日。前に買いに行ったスーツ、着るんでしょ？」

「…まだ寝る」

「おい！！間に合わねぇぞ！！」


ベッドの上で二度寝をかけた攻防戦が繰り広げられている最中、先程まで惰眠を貪っていた百目鬼が顔を覗かせる。


「あ、A！Aもなんとか言ってよ！」

「…もしかして、成人式ビビってんじゃねぇの？
ぷぷぷ、だっせぇw」

「…なんやとぉ！？」


こうして叢雲は飛び起き百目鬼と末っ子お得意、小競り合いを披露していた。

▽→←▽

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す