ヒーロー紅一点物語

藻掻いて、苦しんで ページ19

視界が涙でぼやけることを隠すかのように、三角座りした膝に顔をうずめる。そして、そのままグリグリと頭を押し付けた。


胸にぽっかりと穴が空いた虚無感が心をきゅっと締め付ける。


「なんで…助けられなかった、だろ…ヒーロー、なのに…」


普段は無駄口を多く紡ぐ口から か弱い嗚咽が冷たい空気を揺らした。









閑静な田園風景、欠伸を漏らしながら自慢の俊足で駆け抜ける。


「あぁ、Aちゃん、頑張ってねぇ」

「ありがとうございます！」


佐藤さんが満開の笑顔で労いの一言をかけてくれる。目に見える応援は活動の励みになる。

すると突然として無線がジジ、と音を立てた。


「こちら本部。百目鬼A返答願います」

「はい。こちら百目鬼です、どうぞ」

「◯◯小学校から妖魔が出没との通報あり」

「了解、大至急向います！」


小学校…下手したら被害者が出る…！そう思い、出来るだけ足を速めた。

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