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……
母｢…あなたはAよ。とってもかわいい子なのよ｣
まだ小さくて力の弱い手で懐かしい母の頬を触った。
あたたかな母の腕の中で産まれたばかりのAは……
……
胸焼けするほどの優しくて甘い記憶に吐き気を覚えた。
｢ぉ、かあ、さ…｣
愛をくれた肉親。
きっとその人も魔女狩りで殺されただろう。
｢ごめんなさい、お母さん……許してください…｣
そして許しをこうていた。
ルナの記憶がAに蘇ることで猛烈な拒否反応による自我の崩壊が始まっていた。
……
……
なぜ悪いことをしていないのに人間にいたぶられるのか。
幼いAには分からなかった。
人と違えばすぐに差別する、人間の醜態だった。
｢…お母さん？｣
一人の人影、母親の姿に呼びかけた。
母｢A…貴方のせいよ。呑気に忘れて恋なんて親殺しよ…卑劣で外道で、まるで人間｣
｢ちがう、違うのお母さん!!!｣
衝動でナイフを突き刺していた。
温かな赤に染まりながらゆっくりと目を閉じる。
もしかしたら、自分が生まれなければこんなひどい子にならなかったのでは。
そもそも魔女なんて誰が生み出したのだろうか。
世界が卑しくて、人が恨めしくて、だけど本当は悲しくて寂しくて恋しかった。
複雑で黒々とした感情がAを埋めていった。
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作者名：海原うに | 作成日時：2018年11月18日 22時
