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誰かがクザンを呼んでいた。
それに応えようと勝手に動く身体。
元々眠りの浅いクザンはすぐに異変に気づいた。
満月の夜、無意識に動く身体に身を任せ、
Aの家を出た。
寝静まる森は昼とは違ってとても不気味だった。
風もない、ただ広がる闇と緑の匂い。
これからどこへ向かうのだろうか。
クザンは逆らうことなく従った。
次第に聞こえる声は大きくなり、
やがてハッキリと聞こえる頃にはアヴァロンの塔に来ていた。
どうしてこれほど大きな木に刺さっているのだろうか。
考えながら眺めていると身体がクラっとした。
白い光がクザンを包み込み、
一瞬で景色が変わったことに気がついた。
なぜかクザンは倒れていた、
そして目の前に大量の花。
『こんばんわ、懐かしき人間のお方』
少し遠く、頭上から聞こえた聞き覚えのある声。
だが身体が重くて少しも動かせない。
まるで、全身に海楼石をまぶされたかのように。
『これは夢。覚める頃には元のところに戻ってるから心配しないで。
貴方に会いたかったの、私…ルナはアヴァロンから出られないから』
最初見た時は小さなものだった。
それがこうして話すことの出来るものだとは知らなかった。
ｸｻﾞﾝ｢ルナ…｣
『貴方はどこかシュヴァに似てる。
だから惹かれてしまったんだと思う…』
ｸｻﾞﾝ｢シュヴァ？｣
『クザン、すごく優しくてすごく素敵な人。
あの人を守ってあげて、この世の悲しみと苦しみから、Aを…』
やがて景色はAの家に変わり、
クザンはベッドに倒れていた。
窓から照らす月明かりはグラスを綺麗に透かしていた。
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作者名：海原うに | 作成日時：2018年11月18日 22時
