虹色の花束を捧げる

ベゴニア 【📢】 ページ8

一年で一度だけ回ってくる
女の子がとっても勇気を出す行事。
　
このイベントに踊らされるのは学生のうちだけって
チョコを作っている私を横目に母親が言っていた。
　
ぱーっと友チョコを配り、５つだけ残っているチョコ。
その中でもラッピングの違う１つをみて、
自分の机にべたぁっと溶けたように突っ伏すと
　
　
『その紙袋おっきいね、どうしたの？』
　
「みことくんとすちくん...」
　
　
隣の席に集まっていた２人が優しく話しかけてくれる。
これね、チョコレート、と説明すると
そっかぁ、バレンタインだね、と笑う２人。
　
　
「すちくんとみことくんにも作ってきたから
　貰ってくれる？」
　
　
がさごそと中を漁って取り出して手渡しすると
わぁっと目をきらきら輝かせたみことくんと
ホワイトデー楽しみにしててねぇ、とすちくん。
　
　
『お前らうーっす』
　
『ちょっ、なつくーん！
　こさめのこと置いてかないでよーっ！』
　
　
ばたばたと忙しなく教室に入ってきた
なつくんとこさめくん。
　
こさめが履き替えるの遅いだけで置いてってねーよ、
それを置いてってるっていうんですー、という
子供の言い合いをした２人が机に荷物を置いてから
またこちらの席に戻ってくる。
　
　
『で、ほら』
　
「え？」
　
『チョコレート。あんだろ』
　
　
態度ってもんがあるでしょ、といいながら
なつくんとこさめくんのチョコをそれぞれ手渡しする。
　
　
『おー、本日初チョコ』
　
「え、なつくんもっと貰ってるでしょ」
　
『全部１個上のいるまに吸われた』
　
　
去年はいるまが２年でまだチャンスあるーみたいな
けど今年で卒業だし、間際だからじゃね？
と、既に中身を取り出しながら答えるなつくん。
　
　
『多分今年はらんくんといるまくんに
　ほっとんどの女子行くと思うよ』
　
　
僕たちも多分貰えるけどさ...と
少ししょんぼりした様子のこさめくん。
　
　
『Aちゃんはいるまちゃんにチョコあげないの？』
　
「そんなのあげないよー」
　
　
忙しいだろうし...
相手は私のことなんて知らないだろうし...
　
　
『でも俺紙袋の中に１つだけ残ってんの見たけど』
　
　
あれ、いるま用なんじゃねーの、と
完食しきったチョコを綺麗にまとめながら聞かれる。
　
私の好きないるま先輩と仲の良い４人。
らん先輩も含めて、よく６人で行動してる。
　
いつも相談乗ってもらってるしな...
　
でもやっぱり渡せない、と言い切ろうとすると
　
　
『おーい、なつー』

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