虹色の花束を捧げる

シオン 【🎮】 ページ48

芽を出し、葉が生え、花を咲かせ、そして枯れていく。

その様子をこの場所で何度見てきただろう。

花が太陽に真っ直ぐ伸びている今、まだここにいる。


『あちぃ...』


先程コンビニで買ったペットボトル飲料の水滴が
ぽた、と地面を濡らす。


『お父さーん、早く来てー』

『俺らで先に渡しちゃうよー？』


奥から黒い髪を揺らしながら俺を呼ぶ声。

その片方は紫と白の花束を持っている。

速度を変えることなく２人に近付いていくと
律儀に待ってくれていた２人と目が合う。

俺とさほど変わらない身長。

みんな準備出来た？と全員の手元を確認してから
花束をそっと地面に置いてくれる。

何も言葉を交わさなくても静かに合わせられる手。

目を閉じて、少しの静寂が訪れる。


俺より先に遠くに行くなんて思ってもみなかった。

立派に育った２人を見てAはなんて言うんだろうな。
ありがとう、かすごい、か。

優しく育ったのはAのおかげ、なんて言っても
なつくんが優しいからでしょ？って言うんだろうな。

Aの親御さんにも支えられて
今こうやってこの場に居れる。

それはきっとAが生きてる間に作り上げたもの。

今も、昔も、ずっと隣で支えてくれてさんきゅーな。


閉じていた瞼を開くと、隣から居なくなっていた２人。

振り返ると浜辺で遊んでいるようで。


『...まだ子供だな』

「ほんとにねー...」


隣から聞こえてきた声は聞こえねー筈のものなのに。

２人のこと全然心配じゃなかったよ。
だってなつくんだったんだもん。


「なつくん、ありがとうね」


隣を見るともう見えねー姿。

幻覚か、幻聴か。


『...どういたしまして』


普段ならこんなセリフ吐かねーのに。

こんな時くらい、良いか。


また、時を重ねていく。

春、夏、秋、冬。
ここで四季を感じている。

夏の度にまた３人揃ってここに立つ。

その度に温かい風が吹く。
迎え入れてくれるような温かい風。

持ってくる花束はAが好きなシオン。
遠くへ行ってしまったAを今日も想いながら。

生前伝えて欲しそうにしてた言葉、今なら言えるか。


『...愛してる』





＿＿＿＿＿花言葉＿＿＿＿＿
　
シオン 遠くの人を思う

紫シオン 時が経つのを忘れて
白シオン どこまでも清く
　

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