虹色の花束を捧げる

赤薔薇 【🌸】 ページ46

「え、舞踏会？」


急に舞い込んできた話は思いもよらないもので。

いわゆる没落貴族と呼ばれる私の家に
今更舞い込んでくるような話ではないと思っていた。


『自国の王子の婚約者を決めるみたいなの』


A、行ってきてくれないかしら？

私からしたら願ったり叶ったりな申し出。

この前、といっても３年ほど前に
城下町に出ている時に、らん様にぶつかって
思い切り転けてしまったことがある。


『ごめん！大丈夫？』


ドレス、汚しちゃったよね？


「あ、いえ全然！大丈夫です！」

『ううん、大丈夫じゃないでしょ？』


ちゃんと責任取りたいから家、来てくれない？


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『らん様、おかえりなさいませ』


出迎えられたのはずらっと並んだメイドのみなさん。

そちらのお嬢様は...？と先頭のメイドが聞くと


『俺が服汚しちゃったから洗って返す』


その間着ておけるドレス見繕うから
ドレッサーまで連れて行ってあげて？


『俺もすぐ向かうから付いてってもらっていい？』

「わ、分かりました！」


５分ほど歩いた頃だろうか。
１枚の扉の前で立ち止まるメイドさん。

と、奥の廊下から走ってくるらん様。


『ごめん、待たせちゃったね、入ろっか』


ポケットから取り出された鍵がドアノブを回す。

開かれた先には貴族ですら買えないようなドレスも
見たことないようなドレスも所狭しと飾られている。


『好きなのとかあるならそれあげるんだけど...』


普段ドレスなんて家で着ないのに
好きなの、とかあるわけなくて。

ぶんぶん、とNOを示すジェスチャーが伝わったのか


『じゃあ俺が選んでいい？』

「い、いいんですか...？」


俺が悪いんだから当たり前でしょ、と
ドレスを１着ずつ見もせず何着か取り出している。


『このあたりが似合うと思うんだけど...』


これ、試着してきてもらってもいい？と手渡されたのは
サテン生地で艶々の上に揺れるとちらちら光る
ふんわりとしたシースルー生地が重ねられた物。

試着室をお借りして着てみると
顔がパッと明るくなったように見える。


『入っていいー？』

「あ、はい！お願いします！」


姿を隠していたカーテンが開かれると
目の前にらん様の姿。


『...うん、似合ってる』


お世辞でも嬉しい言葉。

その後家まで送り届けられ、ドレスも返ってきた。

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