虹色の花束を捧げる

杏子 【📢】 ページ41

ごめん、頭冷やすね、とソファから立ち上がり、
俯いたまま横を通り抜けられる。

伸ばした手はそのままに、
ドアを開閉する音だけが響く。

結婚式の招待を受けた時もどこか複雑な顔だった。


『もしもし、急にごめん』


手土産ありがと、とは別に聞きたいことあるんだけど
今時間ある？

掛けたのは今日Aが行った結婚式の花嫁本人。
大学一緒で電話番号知ってて良かった、と安堵しつつ。


『結婚、とかAからなんか話聞いてねぇ？』

『結婚？』


んー、と少し悩んだ様子を見せた後に
あ、と何かを思いついた声をこぼす。


『Aに結婚考えてないの？って聞いたんだけどね』


２人とも身近に感じれなくて、って言ってたんだけど
なんとなく、表情険しくて気になってて。

喧嘩でもしたのかなあ、って思ってたんだけど...

あぁ、そういうことか、と納得してしまった。

周りの恋人の中で１番長く付き合っているのに
未だに結婚の話すらもしていない。

めっちゃいいな、って思った、と呟いたAの顔。


『いるまくん？大丈夫？』

『あぁごめん、助かったさんきゅ』

『いや、そんなのはいいんだけど...』


結婚って女の子の夢だしさ、
無理矢理とは言わないけど考えてあげてほしい。

その言葉に何も答えることはできず、
もう一度お礼を告げてから電話を切る。

職業柄不安にさせてしまっているのは間違いなくて、
それなのにずっと側にいてくれてるA。

Aの部屋の前に立って、
そのままドア越しに声を掛ける。


『A？』


返事が返ってくるのは最初から期待していない。


『今日のこと無神経に聞いてごめん』


俺の活動のことで普段から我慢させてんのに
そんなとこまで我慢させてごめん。

実際、今すぐ結婚、とかは無理、絶対。
まだ俺が安定してねーのに結婚とか無責任と思うから。


『待たせることになる、けど』


俺はAが花嫁が良い、と言うと
目の前のドアが開いて中からAが飛び出してくる。

ぎゅ、と腰に回された腕。


「...わたしも、いるまくんが良い」


すっぽりと覆えてしまう身体。
俺が守ってやりてぇから。


「待っててあげるんだから早くしてよね」


目を少し腫らしながら笑うA。

やっぱり笑顔が一番似合う。





＿＿＿＿＿花言葉＿＿＿＿＿
　
杏子 乙女のはにかみ
　




＿＿＿＿＿ Special Thanks ＿＿＿＿＿

リクエスト者 きいね 様

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