虹色の花束を捧げる

キンセンカ 【👑】 ページ39

ぐさっ、と。

腹部を刺されたと聞いた。

作業中に見知らぬ番号からの電話が来て、
怪しかったけど、取ると病院からで。


『Aが、倒れた、？』


そこから何を聞いたのか。

まったく、いやほとんど覚えていない。

理解したのは、Aが通り魔から周りの人を庇って
代わりに刺されて今現在危篤なこと。

信じられないことばっかりだけど、
信じなきゃいけないことばっかりで。

今日会議あるかららんらんに連絡入れていかないと...

髪もセットせずに着替えだけ済ましてから
駅前のタクシーを拾って行き先を告げた後に
らんらんに電話をかけると、
待ってましたと言わんばかりの速度でコール音が止む。


『みこと？どした？』

『らんらん！ごめん！』


え、何、なんかあった？と
いつもより気を引き締めた声が返ってくる。


『A、が倒れて病院運ばれたから会議参加出来ない
　って連絡入れな、って』

『A？みことの彼女さん？』


会議参加出来ないのは了解。
ちゃんと俺からみんなにも説明しとく。


『ただ、みことがしんどくなったら絶対俺らに頼れ』


会議なんかほっといて全員でそっち行くから


『わかった...』


んじゃあ行ってこい、待ってるから、なんて
普段の配信じゃ考えられないリーダー感。

お客さん、着きましたよー、と病院の前で降りて、
受付に事情を説明すると奥からお医者さんが出てくる。

こちら病室になります、とスライドして開けられた先に
ベッドに横たわっているA。


『先程応急処置が終わり、一命は取り留めました』


１度に治療を行うと身体への負担が考えられるので
まだ治療していない部分は後日行います。

後遺症などは残らないと思いますが、
実際に意識が戻るまでは分かりません。

それでは、ごゆっくりお過ごし下さい。
何かあればナースコールをお願いします、と
病室から出ていくお医者さん。

そっとベッド脇の椅子に座って手を取る。


『ねぇ、A、』


また、隣で笑ってよ。


『まだ、Aとやりたいこと、いっぱいあるんよ』


行きたいとこも、全然行ってないから。


『起きてよ、はやく』





＿＿＿＿＿花言葉＿＿＿＿＿
　
キンセンカ 寂しさに耐える
　

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