虹色の花束を捧げる

ペンタス 【🌸】 ページ33

七夕には逸話がある。

織姫と彦星が仕事をしなくなり、天の神に引き離され
織姫の悲しそうな顔を見た天の神が
７月７日だけ会ってよい、と言ったこと。


「私も会いたい...」


ミルキーウェイ。
通称天の川。

光が繋がって見えて、
あそこを織姫と彦星が渡っている。

幼馴染で、ずぅっと一緒にいたらんらん。
去年も一昨年もイベントの時はいつも一緒だった。

でもらんらんは自分の夢があるから、って
１８歳で東京まで１人で行ってしまった。

私も付いてく、といっても
Aには関係ない俺の夢だから、って
俺の帰るところ残しといて、って。

しゃーないなぁ、なんて
頷いてしまった私も私な気がするけど。

月に１回ほどメッセージのやり取りはある。

先程送った、空すごい綺麗！という
メッセージには既読すらも付いていないけど。

母親が置いていった桃色の短冊。
ぴらぴら、薄い紙が曲がる。


「...信じてないけど、一応、」


勉強机の上に置いている筆箱の中から
シャーペンを一本取り出す。


「書ーけた」


窓際に飾ってある小さい笹。
くるくると紙に付いている紐を
笹にくくりつけようとした。


「ちょ、！」


神様のいたずらか。
横から吹いてきた風によって
手に持っていた短冊が宙に舞う。

拾いに行かなきゃ、と道路に出ると
落とした短冊を拾っている男の人。


「ごめんなさい！
　それ私の短冊なんです！」

『...A？だよね...？』


え、なんで、私の名前。


「...もしかして、らんらん？」

『うん、そう、久しぶり』


んで、これ、どういうこと？と
短冊をひらりとこちらに向けてくる。

は、と気づいた時にはもう遅い。


『なに、A、寂しかったん？』

「うるっさ！別にそんなんじゃないし！」


早く返してよ！と
手に握られている短冊を取ろうとするも
腕をぐっ、と上げられ、届かない。


「...もういい、それいらない」

『そりゃいらないだろ』


叶ってんだから、とらんらん。

これは七夕が起こした奇跡か、
それとも自ら起こした奇跡か。



らんらんに、今日だけでも会えますように。





＿＿＿＿＿花言葉＿＿＿＿＿
　
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