虹色の花束を捧げる

リナリア 【👑】 ページ20

『わぁ！』
　
　
ありがとう、と王子様らしく笑顔を浮かべながら
にこにこ、とチョコを受け取るみこちゃん。
　
その横をすぅーっと通る私。
　
昔、その隣に居たのは幼馴染の私だけだったのに。
　
別にみこちゃんから突き放された訳でもない。
ただ中学、高校、と年々モテていくみこちゃんに
私自身が釣り合わないと思ったから。
　
　
「作ってきた、のに」
　
　
今年もきっと渡すことは出来ない。
最後にあげたのは３年前の中学１年生。
　
　
『...Aちゃん？』
　
　
がた、と椅子を引いた音で起きた隣の席のすちくんが
おはよぉ、と舌足らずな声で挨拶を届けてくれる。
　
　
「すちくん、こんな日でも眠そうだね」
　
　
起こしちゃってごめんね、おはよ、と返すと
俺はむしろ友達にあげる立場だからねぇ、と
ちらりと料理男子な一面。
　
　
『Aちゃんは誰に渡すのー？』
　
「...んん、渡そうと思ってたんだけど、ね」
　
　
その１文で察したのだろう、
ほわ、と緩んでいた顔がきゅ、と少し引き締まる。
　
　
『あげないの？』
　
　
廊下で女の子から詰め寄られているみこちゃんを見て、
私の方に尋ねてくるすちくん。
　
ほんと、すちくんって察しいいな...
　
　
「最近関わってないしさ、
　あれだけモテてるんだよ？」
　
　
私が行ったところで何もなくない？
少し皮肉ぽく言ってしまっただろうか。
　
　
『俺は渡すだけ渡したら良いと思うけどな』
　
「うん、うん...」
　
『すちくーーーーん！』
　
　
後ろからわぁ！と飛びついてくる勢いで
すちくんの名前を呼ぶみこちゃん。
　
　
『あ、みことちゃん』
　
　
おはよぉ、と挨拶を交わす２人を
横目でチラ見していると、
ぱ、とすちくんと一瞬目が合った。
　
　
『みことちゃん、
　Aちゃんから渡したいものあるんだって』
　
「え、」
　
　
ごめんね、と声に出さずに手を合わせるすちくん。
　
私がこのままだったら何もしないって分かっていて、
優しさでやってくれたんだろう。
　
　
『A？』
　
　
なになに？ときらきらした目を向けてくるみこちゃん。
　
　
「...こ、れ！」
　
　
ぐい、と胸元に押し付けたチョコを
わぁ、と受け取るみこちゃん。
　
　
『チョコ、いいの？』
　
「あげたいからいい」
　
　
無愛想な言葉にも感謝を伝えてくれるみこちゃん。
　
優しくするだけして鈍感なんて、ずるい
　
　
　
　
　
＿＿＿＿＿花言葉＿＿＿＿＿
　
リナリア この恋に気付いて
　

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