虹色の花束を捧げる

ハルシャギク 【🎮】 ページ16

がたん、ごとん、というのは誇張しているのだろうか。
　
左右に揺れる振動を感じながら
夕日の中を走る電車の座席に座る。
　
私が乗って２分ほど経った頃、
運転手が次の駅の到着アナウンスを車内に流す。
　
そのアナウンスの３０秒ほど後に
ゆっくりと速度を落とした電車が完全にホームに止まり
ぷしゅぅ、と空気の抜ける音を立ててドアが開く。
　
この駅は学校が近く、いつも授業の終わった学生が
ぞろぞろとこの時間帯に乗り込んでくる。
　
普段は乗り込んでくる学生も座って静かな車内だが、
今日はどこか違っていた。
　
なぜ、とスマホから顔を上げて辺りを見回すと
あからさまに人気者であろう男子６人組。
　
いわゆるカースト上位組、とでも呼べばいいのか。
　
私の座っている席の近くのドア付近で固まり、
今日どこ行くー？と学生らしい会話を繰り広げる。
　
　
『んなんゲーセンに決まってんだろ』
　
　
えー、なつくんいつも行ってるじゃん！
と女の子と同じくらい高い声の男の子。
　
　
『あんなんどんだけ行ってもいーんだよ』
　
　
はい、けってー、と強引に仕切る男の子。
他の男の子達も特に異論は無いようで、
じゃあ２個先の駅で降りるか、と
ゲーセンに行く方向性で固まった様子。
　
普段こんな会話聞くことないから
だいぶ盗み聞きしちゃったな、と思いながら
次の最寄り駅で降りる準備を始める。
　
ぐ、ぐ、とたくさん詰めたバッグから
イヤホンを取り出そうと手を突っ込むと
こん、と地面に落ちた新作ゲームのカセット。
　
あ、と拾おうとすると、私が拾うより先に
すっ、と持ち上げられたカセット。
　
　
『これ、新作？』
　
　
カセットを拾って目の前に差し出してくれていたのは
先程ゲーセンと言っていた男の子。
　
急に話しかけられてビビった私を察した男の子が
あー...と少し考え込む。
　
　
『すまん、俺もこれ気になってたから』
　
「あ、いや、全然、」
　
　
大丈夫です、とか細い声で続ける。
　
　
『あのさ』
　
　
連絡先、教えてくんね？、と
カセットを受け取った直後に続けられる言葉。
　
え、と拍子抜けした声が口から思わず溢れる。
　
　
『あーいや、感想、知りたいから』
　
　
あぁ、なるほど、と納得して、
スマホを取り出し、連絡先を交換する。
　
　
『おし、ありがとな』
　
　
目の前で元気な笑顔を浮かべる男の子は
さっきとは全然違う表情で。
　
すき、かも？
　
＿＿＿＿＿花言葉＿＿＿＿＿
　
ハルシャギク 一目惚れ
　

紫パンジー 【📢】→←アイビー 【👑】

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