虹色の花束を捧げる

サギソウ 【🖋️】 ページ13

『ちょっとの間、だから、待ってて』
　
　
複雑な顔をしながらキャリーケースをがらがらと引いて
出ていくすちくん。
　
関西でライブするから今日から２泊３日するらしい。
　
関係ない私が行く理由もないから、と
同行するのを断ったが正直後悔しかない。
　
着いていけば関係者としてライブも見れたんだろう。
　
でもそれってリスナーさんが抽選で頑張って来てる中、
私だけそんなぽんっと見るのは
なんだか違うな、と思って断った、けど...
　
　
「うぅぅ...むり...しんどい...」
　
　
あの柔らかい笑顔をリスナーのみんなに振りまく、
あの声をたくさん響かせる、
普段、私が見聞きするすちくんを。
　
リスナーさんを喜ばせているすちくんは大好きだ。
隣で見ててとても幸せそうで、
あの感情を作れるのはリスナーさんだけなんだろう。
　
嫉妬、とかじゃない。
きっと寂しい、だけ。
　
ふぅ、と天井を仰ぎながら息を吐き出して落ち着くと
机の上に置いてあるスマホからぶる、と振動する。
　
すっ、と通知を確認すると、
さっき家を出たすちくんからのメッセージ。
　
　
「なん、だろ...」
　
　
見るのが怖い、
　
　
「...こ、れ」
　
　
覚悟決めてメッセージを確認すると
たくさんの連絡事項を見やすくまとめたもの。
　
急いで確認したくて、少し体勢を崩しながら
がた、と机を揺らして冷蔵庫をがっ、と開ける。
　
　
「これ、ぜんぶ、すちくんの...」
　
　
和食から洋食から中華まで、
とても３日間分ではない料理がタッパーに詰められ
所狭しと冷蔵庫に整理されている。
　
全部すちくんが作ってくれて、整理してくれて。
　
　
『Aが寂しくならないように
　いろんなのいっぱい作っておいたからね
　好きなの食べてね』
　
　
メモとは別に追加で送られてきたメッセージ。
　
　
「こんなの、ずるい...」
　
　
私が寂しくなるのもきっと全部伝わってた。
　
　
『普段使ってる香水、置いてるから
　自由に使っていいからね』
　
　
え、と次は部屋に確認しに行くと
すちくんの作業机の上に置かれている香水。
　
しゅ、とワンプッシュ。
　
ほんのりと香ってくるいつもの匂い。
　
　
ありがとう、っていっぱい伝えよう、
　
すちくんが疲れて帰ってきてくれるとき、
たくさんの美味しい料理で出迎えよう。
　
枕に香水振って寝よう。
　
　
会えなくても、夢ですちくんに会えるように。
　
　
　
　
　
＿＿＿＿＿花言葉＿＿＿＿＿
　
サギソウ 夢でもあなたを想う
　

プルメリア 【☔️】→←↓

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す