追憶 写真家 ページ1
追憶
愛用の古いカメラに今日も貴女を写す。
「綺麗に撮ってね」
この一言は貴女の口癖であり、私の好きな言葉だ。
「今日は何処で撮ろうか？Aの好きな場所に行こう」
「……」
あぁまたそうやって黙り込む。写真を撮る前はいつも気乗りしない顔で私を見つめる。そういうところも可愛らしいと思うのだけどね。
「今日は赤の教会で撮ろう。今はたしか使われていないはず…教会の中に立つAはとっても綺麗だと思うよ」
私はそう言って、Aを外出用の額縁に入れ教会へ向かう。何千回と繰り返した行動、目を瞑ったままでもできる。それが私の罪滅ぼしだから。
「私、この写真好き…ジョセフさんが撮ったの？」
丁度お茶を飲もうと共同のキッチンに入ると先客がいた。右手にさっき私が落としてしまっていた写真を持ち、じっと見つめている。
「あぁそうだよ。美しく撮れているだろう？綺麗なものをそのまま綺麗にとっておける…そんな写真が私は好きだよ…」
きっかけは些細なことだった。たまたま荘園に来たばかりだったAが私の写真を誉めたことだった思う。写真の知識があまり無いAに写真のことを教えることは純粋に楽しかった。あの日までではあるが。冷たい雨の降る夜に階段で足を滑らせ、息を引き取った。私は私の中に芽生えていたAへの思いを嫌と言うほど自覚した。
どこからおかしくなってしまったのだろうか。貴女の写る写真は私を錯覚させていった。写真でなら貴女をまた見つけられると。レンズを透して見る世界はいつでも美しい。そしてその中に貴女はいると。丁寧にAの痕跡を集める、二度と失わないように。
「愛しているよ、A」
窓際に飾ってある一番大切写真––––木漏れ日の中微笑むAは何も変わっていない。
「明日の試合の手紙ですよ。…ジョセフ、もう彼女は亡くなっている。だから"彼女"と写真を撮りに行くなんてことはやめた方がいい。」
そんなこと他人に言われなくともわかっている。
「Aがもういないなんてことは知っているさ。ずっと前からね。失ったものに縋り続ける私は愚かだと思うかい」
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作者 - パスワードを紛失してしまったため、もう一度別に制作することに致しました。ご迷惑をおかけしますがタイトルは変更しています。 (2021年7月12日 18時) (
レス) id: 58cd58d594 (このIDを非表示/違反報告)
あ - ご指摘ありがとうございます。訂正させていただきました。 (2021年3月7日 2時) (レス) id: 06202acefd (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時：2021年3月3日 14時
