28・知らない ページ29
『ん…』
目が覚めたAは、まだハッキリとしない意識の中で時計を見る。
針は既に昼の12時過ぎを指していた。
寝すぎたせいもあってか重く感じる体のまましばらくベッドの上でゴロゴロするAはしばらくして寝ぼけ眼のまま起き上がり、顔を洗おうと洗面台へと向かって自身の顔を見る。
『いつにも増して酷い顔』
自虐のように笑うAは顔まで洗い落とすかのようにして冷たい水で顔を洗った後、食堂で自分の珈琲を淹れた。
『うまうま〜…体に染みる〜』
珈琲のお陰か、だんだんと冴えてくる頭と感覚にようやくAは気づく。
船の中に存在する2つの気配と、あの街で嗅いだ甘ったるい匂いに。
Aは気配を押し殺しながら自身の部屋に戻り珈琲のカップを無造作に置くと、上着を羽織って船を飛び出した。
忘れた筈だった。忘れようとした筈だった。
あの匂いも、声も、胸の痛みも、全て。
『消えろッ…!!』
振り払うかのように街とは反対側の森の中を突き進んで行くA。
けれどあの甘ったるい匂いは鼻の中染み付き、声は耳の中に残ったまま、胸はズキズキと痛む。
どれだけ走っても、振り払おうとしても消える事のないそれらにAはその場にうずくまった。
『消えろッ…!消えろッ…!!』
まるで質の悪い毒のように体中を駆け巡る不快感にAは涙を流す。
『お願い…消えてよッ…!!』
この気持ちをどう整理すればいいのか。
その気持ちの名前を知らないAが分かるはずがなかった。
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イブ - 私は、ワンピースと東京喰種のどちらともはまっているので、もうめっちゃいい作品でした! (2019年7月14日 14時) (レス) id: ecc340d7eb (このIDを非表示/違反報告)
ナー(プロフ) - アリス・キーリングさん» ありがとうございます!ワンピ面白いですよね、本当に!!次回作も頑張ります…! (2018年10月21日 12時) (レス) id: a25e8ef1cd (このIDを非表示/違反報告)
ナー(プロフ) - 白ぴくみんさん» ありがとうございます!そうなんですね!コナン、面白くて…!!ご期待に添えれる様頑張ります! (2018年10月21日 12時) (レス) id: a25e8ef1cd (このIDを非表示/違反報告)
ナー(プロフ) - あやさん» ありがとうございます〜!!過去の作品も読んで下さっていたなんて…感激です!作者登録まで…(T ^ T)重ねてお礼申し上げます!!こんな作者ですがよろしくして下さいm(_ _)m (2018年10月21日 12時) (レス) id: a25e8ef1cd (このIDを非表示/違反報告)
アリス・キーリング(プロフ) - 完結おめでとうございます!ワンピ私もどハマり中です!次作楽しみです! (2018年10月21日 7時) (レス) id: f9dc96f517 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナー | 作成日時:2018年9月13日 19時