第63話 クザンside ページ17
『はいどうぞ』
そう言っておれに両手を差し出す目の前の少女は今にも消えそうなくらい儚くて、悲しそうに笑った。
さっきまで泣いていたのか、目は赤く泣き跡があった。
こんな子を、なぜ政府や海軍は縛ろうとするのかおれには分からない。
『…約束、守ってね』
「…あァ」
Aちゃんの白くて細い手首に、重く冷たい海楼石の手錠が付けられた。それは自由を失った音。
物珍しそうに眺めるAちゃんはポツリポツリと話し始めた。
『私、ようやく皆んなを守れるんだね』
この子は、どれ程の辛い人生を送って来たんだろうか。その瞳に映る色はそれを物語っているように見えた。
『ずっと思ってた。皆んなを守りたいって』
「…それが自己犠牲でも？」
『うん』
迷いもなくそう答えたAちゃんは、すでに前を向いていた。
この子は、強い。けど脆い。
今にも壊れそうなAちゃんはきっと、あの一味を思っているからこそ立てているんだろう。
そうでなければ前を向ける筈がない。
『私、幸せだったなあ…』
誰にも聞こえないよう呟いたその声は、おれの耳には届いていた。
Aちゃんの幸せはきっとあの一味にいる事だった。けどそれは政府や海軍の黒い思惑によって押し潰され、きっとこのまま政府に連れて行かれれば二度と幸せなんて巡り会えないだろう。
「…行こうか」
小さく頷き、おれの横を歩きながらゆっくりと軍艦に向かって歩いて行く。
一度立ち止まるAちゃんは、後ろを振り返ろうとして止めた。まるで自分を押し殺すかのようにして。
そして申し訳なさそうに笑いながら言った。
『今…ルフィの声が聞こえた気がしたの。Aって私の名前を呼んでた…そんな事あるわけないのにね』
ああ、おれは今、海兵としてここに居たくないと切実に思った。
一人の人間として、あいつらにAちゃんを助けてやって欲しい。
そんな願いも、きっと願うはずない。
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？？ - マリモってゾロの事じゃないの？ww (2022年8月27日 7時) (
レス) @page46 id: a460779ab3 (このIDを非表示/違反報告)
R - マリカマリモさん、マリモはコケみたいなヤツの塊ですよー (2021年11月28日 22時) (レス) @page46 id: ea655dc91f (このIDを非表示/違反報告)
ホウ酸(プロフ) - 思わず一気読みしてしまいました！とても考えさせられる物語で、途中の感動シーンで泣きそうになりました(T ^ T)素晴らしい小説をありがとうございます！これからも頑張ってください！！ (2020年8月15日 16時) (レス) id: d043e2c381 (このIDを非表示/違反報告)
マリカマリモ - マリモって何？ (2020年1月4日 17時) (レス) id: 917dfc6071 (このIDを非表示/違反報告)
ナー(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます！こちらも読んでいただけたんですか…！感謝感激です…(T ^ T)自信のない作品でしたがそう言って貰えて良かったです！ありがとうございました！ (2018年10月27日 10時) (レス) id: a25e8ef1cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナー | 作成日時：2018年7月15日 17時
