第2話 ページ3
結局、家に帰ったのは夜の9時過ぎ。
早く帰ったところで何かあるわけでもないし、私がいてもいなくてもあの家は変わらない。そんな冷たい場所だから。
『…ただいま』
そう分かっていても、言葉を吐く私はきっと温かい言葉をどこかで望んでいるのだと思う。自分でもバカみたいだと思うけど、寂しさを埋めようとした不器用な私の心内を理解して欲しい。
リビングに繋がる扉の隙間から漏れる温かい光と楽しげな笑い声は、私のいる冷たく暗い玄関とはまるで違う世界だ。
とりあえずリビングの扉を開ける。
すると興味なさそうに、確認事項のように母は「帰ったの」と私に言うだけで、再びテレビに目を移して父と笑い合っていた。
寂しい、と言うより虚しい、が正しかった。
母にとって私という存在はもはやただの同居人。
そこに家族の絆や親子の愛なんてものは既に存在しない空虚なもの。そして今その母の愛情を向けられているのはあの再婚相手の父と弟だけ。
私じゃない。
とりあえず喉の渇きを潤す為に水を飲み、冷蔵庫の中に入っていたカットフルーツを持って自室に向かおうとリビングを出た。
すると、弟の部屋から弟の泣き声が聞こえてきた。別に弟の事が嫌いなわけではないから様子を見に行くと、おしゃぶりが口元から離れているのが見えた。
おしゃぶりをくわえさせて泣き止ませると、幸せそうな顔をして眠る弟。
『…あんたはいいね。私とは正反対』
皮肉にも聞こえるセリフを私は心から吐き出していた。そんな自分に嫌気がさして、自室に入り鍵を掛けた。
私には、私の世界しかないから。
電気もつけない真っ暗な部屋が、私の小さくてちっぽけな世界を現実的に表しているようだった。
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ナー(プロフ) - oumim4isさん» ありがとうございます！！ (2018年6月19日 8時) (
レス) id: d4eecf9526 (このIDを非表示/違反報告)
oumim4is(プロフ) - ナーさん、「広い世界と自由な君へ」の評価100件越え、おめでとうございます！
(2018年6月17日 20時) (携帯から) (レス) id: f24050f8f1 (このIDを非表示/違反報告)
ナー(プロフ) - タピオカミルクティーさん» コメントありがとうございます！めちゃくちゃ嬉しいです！自己満小説を見て頂けるだけで嬉しいです…(T ^ T)楽しんでもらえるように頑張ります！ (2018年6月9日 23時) (レス) id: b2b2002650 (このIDを非表示/違反報告)
タピオカミルクティー(プロフ) - ナーさんの作品全部見てます！大好きです！続き楽しみにしてます！！ (2018年6月5日 17時) (レス) id: 9dcbc0f8ca (このIDを非表示/違反報告)
ナー(プロフ) - ハルさん» ありがとうございます〜！！ (2018年5月20日 15時) (レス) id: b2b2002650 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナー | 作成日時：2018年4月24日 19時
