13話 ページ13
Aside
この声はっ……電話に出てくれた人だ！
思ってたよりも派手な見た目だけど、にこっと笑う顔は優しそうで、少し安心した。
「あ……」
はじめまして、と言おうとした瞬間、彼の後ろに集まった人たちに気づいた。
「っ！」
興味深そうにこっちを見つめるたくさんの視線が、記憶の中のやつらの視線とダブる。
…………怖い。
「っ、は、っはあ、はあっ」
そう思ってしまった途端に呼吸が乱れる。
落ち着け、やつらとこの人たちは全然違う。大丈夫だから、落ち着くんだ、落ち着け自分………
念じれば念じるほど、息が苦しくなっていく。
やばい、どうしよう。こんなところで、、
と、背中を大きくて温かい手がさすってくれているのに気づいた。
神山「のんちゃんっ、俺のバッグからビニール袋とってきてっ！
……大丈夫。焦らんでゆっくり呼吸して」
小瀧「……っはい！ふくろ！」
神山「ありがとう！……はい息はいて……そうそう、吸ってー、はいてー……」
涙でにじんだ視界では何も見えなかったけど、声を頼りに必死で呼吸をする。
「……はあ、はあ、はぁ…………」
神山「……落ち着いた？」
ようやく息が楽になって、うなずく。
周りを見ると、私たち２人しかいなかった。
神山「ごめんな？さっきはいきなり大勢で……」
「っ」
必死に首を横にふる。悪いのは私だ……。なんでいつもこうなるんだろ。
神山「……どうする？今みんなリビングにおると思うけど……自分の部屋に先に行って荷物置こか？」
………これからどんな人たちと暮らすのかもわからないし、この人の名前も知らない。
でも、私に一人で気持ちを落ち着かせる時間をくれようとしてるのはわかった。
「……部屋に、行きます」
神山「そか、わかった。じゃ、行こか」
彼は、私のボストンバッグをさりげなく持つと、階段を上がりはじめた。
神山「ここの階段上がってすぐが、きみの部屋や。廊下の突き当たりがリビングやから、いつでもお
いで」
部屋の前でバッグを置くと、彼は振り返って私の目の高さまでかがんで言った。
神山「自己紹介、まだやったね。俺は神山智洋。よろしく！」
……神山、さん。
神山「……きみの名前も！教えてもらえるかな」
…………この人になら、
「っ、………………Aです」
神山「！…ありがとう！Aちゃん、よろしく！」
神山さんはにこっと笑うと、奥のリビングに向かって行った。
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作者名：もちのきもち。 | 作成日時：2019年12月15日 16時
