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___数学の時間
「A、ここの答えはなんだ」
「えーっと…えっと…それは…えー…」
先生に指名されたAは答えの書いていない教科書をひたすら見つめている。
数学の時間にしか見れないAの焦った姿をいつものように横目で見ていた時、「奈良坂くん…わかる…?」と申し訳なさそうに小声で問いかけてくる。
毎度のことなので、最初から聞けばいいのに、と思いながらも答えを口頭で伝える。
するとAは、俺の方を向いて
「ありがとう!」
と大きな声で言った。そう大きな声で。
「……あっ…間違えた…」
Aが気づいた時にはもう取り返しはつかず、クラス中はお腹を抱えて笑っていた。俺が笑いを堪えていると、恥ずかしそうに両手で顔を覆う姿があった。
(……可愛い)
しかしこの一連の流れを先生は見逃せるはずもなく、
「A、奈良坂に答えを聞いた罰としてこのプリントを明日までにやってこい」
「はい…」
問題がびっしりと書かれたプリントをAに渡してすぐに、授業を再開した。
「……何これ…どうしよ、わかんない…」
そんな弱々しい声は、隣の席の俺にしか聞こえていなかった。
___時間は経ち、放課後
「プリントどこまで解けたんだ」
毎度の休み時間、数学のプリントを必死に解いていたので、帰る前に念のため聞く。
「あ、奈良坂くん。プリントね、ここまで終わったよ〜!いつも数学の時間ありがとうね。」
そう言って見せてくれたプリントは4分の1程度しか埋まっていない上に
「ほとんど間違えているな」
「うそ!?最悪だ……」
やり直しだった。
それを知って机に項垂れるA。そんな姿に思わず笑みが溢れる。
「本当にAって面白いな。俺の家来るか?」
「え?」
「俺で良ければ教える」
「本当に…!奈良坂くんありがとう!!」
Aの嬉しそうな笑顔に期待してしまう自分が嫌だった。
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作者名:もち丸 | 作成日時:2020年12月23日 10時