ワールドトリガー【短・中編集】 (ページ26)

今日:31 hit、昨日:1 hit、合計:117,205 hit

. ページ26

今日は2月14日。

そうバレンタインデーだ。

「おい、弾バカ。何個もらった？」

「数えてねーよ」

「んじゃー後で勝負な」

「あぁ」

とりあえず返事はするが、正直チョコの数なんてのは、どうでも良かった。

「俺、呼ばれてっから行ってくるわー！悪いな！」

米屋は笑顔でそう言うと教室を出て行った。

(…呼ばれてるってまさかAじゃねぇよな)

Aは呼び出すタイプじゃないとわかっていても、自分がチョコを貰えてないがために不安に思ってしまう。

確認だけ、と様子を見に行こうとした時、教室のドアがバンっと開いた。

「お、いたー！！公平お待ちかねのAちゃんで～す！」

そう言って笑顔で俺の方に近寄ってくるのは、本当に俺が一日中待っていたやつなのだが、

「待ってねーよ」

気持ちとは反対の言葉をつい口にしてしまう。

「そんなこと言うとチョコあげないよ～……って、こんだけあったらマジでいらなそうだから押し付けるわ」

Aは、俺の机の上にあった紙袋を手に取ると、自分の持っていたチョコをその紙袋の中に入れた。

「っ！おい、なにやってんだよ！」

紙袋をAから奪うと必死に中身を漁る。

「え、なに。そんなにいらなかったの私のチョコ。泣くよ？？」

「ちげーよ！！他のと混ざるだろ。」

(あ…)

手を止め、恐る恐る顔を上げると、眼を丸くして俺を見つめるAがいた。

(勢いで言っちまった…やべえ、完全にバレ…

「きっと不味いから別にしとこう、みたいな扱いやめろ！！」

…てなかった。)

「そんなんじゃねぇから」

「んー…なら許してあげる。てゆーか、陽介は？」

そう俺に問いかけ、「陽介にも持ってきたんだけど」と俺と同じチョコの入った袋を取り出す。

同じか、と思いつつ「呼ばれたっぽいな」と応えると「じゃー下駄箱にでも入れといてやるか～」と荷物をまとめ始めた。

「もう帰んの？」

「うん、これからボーダー行って残り配りに行ってくる」

「じゃ、俺も一緒行くわ」

「ほんと！やったね～！」

そういうひとつひとつの言葉と笑顔にたまらなく嬉しくなってしまう俺は重症だ。