22 ページ22
明智くんは覚悟を決めたように顔を上げ、窓を背にして歩き出した。
「どこへ行く。」
「僕は、人の目を気にしながらずっと生きてきた。日陰の道。でも僕は陽の当たる道を歩きたいんだ!だから……だから、僕は変わりたい。強くなりたい。」
彼になんて声をかければ良いか分からなかった。徳川くんの言葉が行動が彼に響いてしまったのだから仕方がない。
「裏切るのですか!?」
「裏切るんじゃない。これ以上自分を裏切りたくない!自分に正直に生きたいから!僕は……。」
ただ私の言葉は響かなかったのかと思うと少しだけ悲しい気もする。
「是非に及ばず。」
織田くんが図書館を後にし、私も教室の様子を見に行くことにした。明智くんが降伏を宣言したことで生徒たちは動揺している。
「明智の野郎、裏切りやがった。」
考えれば考えるほど、明智くんは裏切るように仕向けられていたのではないかと思う。
「どうしたん、Aちゃん。険しい顔して。」
椅子に座りじっと考え込む私に声を掛けた豊臣くん。
「みんなも険しいよ、顔。」
何故かクラスのみんなの注意が私に向いていた。
「私は明智くんの立場に立って考えたらこの結果もあながち予想外じゃないのかもなと思ってる。」
「明智は鼻から裏切る気だったってことか?」
「そうじゃなくて。24時間の恐怖に耐えて、やっと解放されるって時に堂々と自分の気にしていることをあそこまで明文化されて、道を作るなんて引っ張られたら、揺らぐのも無理はないんじゃないかなと思うってこと。」
私がそう言うとみんな黙り込んでしまった。多少なりとも納得してくれたのだろうか。でもやっぱり気になるのは徳川くんが明智くんを選んだ理由だ。ここまできてもピースが全然揃っていない。私は何を見落としているのだろう。
すると、黒板にある映像が映し出された。屋上の縁に座る織田くんが旗を提げている。旗印ではなく、宣言のようなもの。
「天下を獲る」
その一歩に何かが変わる予感がした。
592人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もちゃ(プロフ) - みーさん» コメントありがとうございます。こだわってるところ褒めていただけて光栄です。楽しみにしてくださってることも嬉しいです、ありがとうございます。 (2022年9月9日 3時) (レス) id: ecce92cfda (このIDを非表示/違反報告)
もちゃ(プロフ) - さくらさん» コメントありがとうございます。お返事遅くなってしまい申し訳ございません。好きと言っていただけて嬉しいです。応援もありがとうございます、頑張ります。 (2022年9月9日 3時) (レス) @page22 id: ecce92cfda (このIDを非表示/違反報告)
みー - このお話の2人の距離感が私も好きです!これからも楽しみにしています! (2022年9月5日 10時) (レス) id: ef372782cb (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 面白くて好きです!更新頑張ってください! (2022年8月16日 23時) (レス) @page19 id: 2a8d4606f0 (このIDを非表示/違反報告)
もちゃ(プロフ) - moka、さん» コメントありがとうございます。試行錯誤しながらですが最初のうちは近すぎず遠すぎずを目指しているのでそんな2人の距離感を好きって言ってもらえて嬉しいです。感想、お気遣い、ありがとうございます。 (2022年8月11日 2時) (レス) id: ecce92cfda (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:もちゃ | 作成日時:2022年7月29日 15時