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2人を教室において帰路に着くと何やら考え事をしていそうな背中が見えた。
「みやびちゃん!」
名前を呼ぶと驚いて肩を震わせていた。それほど考え事に夢中だったということだろう。
「ごめん、考え事の邪魔しちゃった?」
「いえ、とんでもございません!」
「鳴け!!」
みやびちゃんと話して帰ろうかと思ったら急に大きな声が聞こえてきた。声のする方に向かうと、織田くんがゲージの前に立って中にいる鶏となにやら話している。
「鳴け、鳴くのだ!」
一向に鳴こうとしない鶏と諦めない織田くん。……そもそも鶏と意思疎通ってできるものなの?
「鳴かぬなら……コケコッコー!俺が鳴く。」
「俺が鳴く、とな!?」
「ええ……。」
やっぱり織田くんって分からない。
「ゴミが何をしている。」
「見て分からんかうつけ。」
声を聞き付けたのか何処からか徳川くんか現れた。ゴミとうつけか……この学校の生徒の二人称はどうなってるわけ?
「鳴くのを待ってる。」
「鳴くのを待つか。俺ならこうする。」
徳川くんはそう言って鶏のゲージの前にしゃがむ。
「鶏よ。この家康のために、鳴け。」
「コケコッコー」
数秒も経たないうちに鶏は鳴いた。
「恐怖を植え付け支配すれば良い。」
その言葉を皮切りに徳川くんと織田くんの睨み合いが始まる。しかしそれは喧嘩へと発展することはなく通り過ぎていった。みやびちゃんと途中まで一緒に帰り家に着くと、すぐに着替えて道場へと向かう。今日は自分の稽古ではなく下級生の稽古に出向き教えることになっている。時たまこうやって父の手伝いをしているのだ。倅がいない成田家はいずれ私が継ぐことになるから。
「お疲れ様。しっかり疲れとるんだよ〜。」
「A先生!」
稽古を終えると、明義くんが話しかけてきてくれた。
「今日の自分どうでした?かっこよかった?」
こういうところちょっと豊臣くんに似てるなあなんて思いながら、かっこよかったよと頭を撫でる。サボることがなくなった明義くんはどんどん強くなっているし、なあなあで父に怒られることが多かった道場の中での作法も身に付いてきている様で、その成長ぶりに感心した。なにより稽古が楽しいと言ってくれたことが嬉しい。
「ところでずっと気になってたんですけど。」
「どうしたの?」
「この前のお兄ちゃんって先生の彼氏ですか?」
少し遠くにいた父の眉がぴくりと動くのが薄ら見えた。
「違います!」
なんて爆弾発言をしてくれたんだ君って子は。
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もちゃ(プロフ) - みーさん» コメントありがとうございます。こだわってるところ褒めていただけて光栄です。楽しみにしてくださってることも嬉しいです、ありがとうございます。 (2022年9月9日 3時) (レス) id: ecce92cfda (このIDを非表示/違反報告)
もちゃ(プロフ) - さくらさん» コメントありがとうございます。お返事遅くなってしまい申し訳ございません。好きと言っていただけて嬉しいです。応援もありがとうございます、頑張ります。 (2022年9月9日 3時) (レス) @page22 id: ecce92cfda (このIDを非表示/違反報告)
みー - このお話の2人の距離感が私も好きです!これからも楽しみにしています! (2022年9月5日 10時) (レス) id: ef372782cb (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - 面白くて好きです!更新頑張ってください! (2022年8月16日 23時) (レス) @page19 id: 2a8d4606f0 (このIDを非表示/違反報告)
もちゃ(プロフ) - moka、さん» コメントありがとうございます。試行錯誤しながらですが最初のうちは近すぎず遠すぎずを目指しているのでそんな2人の距離感を好きって言ってもらえて嬉しいです。感想、お気遣い、ありがとうございます。 (2022年8月11日 2時) (レス) id: ecce92cfda (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:もちゃ | 作成日時:2022年7月29日 15時