「ありおかくん」 ページ10
あ…。
昼休み。職員室からの帰りに先輩の後ろ姿を見つけた。髪の色にスカートの長さに、あんな格好は先輩だけだからすぐわかる。俺の前、10メートルくらい先を歩いてる先輩。後をついていくつもりはないんだけど、ここは廊下で渡り廊下も階段もまだ先にしかないから仕方ない。
山田が弁当を食べないで待ってくれてるはずだから走って戻ればいいんだけど、それをする気にはならなかった。だって、見ていたい。先輩のこと。
時々、立ち止まる先輩。どうやら荷物を持っているらしく、立ち止まっては抱え直してるっぽい。その度に縮まる、俺と先輩との距離。高まる胸のドキドキ。振り向かれたら、どうしよう。
「あっ」
先輩の声とともに、バサバサバサっとノートが落ちた。抱え直したときにバランスを崩したっぽい。急いで先輩のもとに走って、ノートを拾うと文句を言ってる声が聞こえた。
「もー、バカ薮。……………あ、ありがと」
バカ薮って、薮っち先生?ノートに見えたのは、社会のワークだった。教科担任が同じってだけで、ただそれだけで何故か嬉しくなる。そして、ありがとと言いながらニッコリ笑う先輩…やっぱり可愛い。
「先輩、どこに運ぶんですか?俺、半分持ちます」
「え、ホント?助かるー」
結局、先輩の分も全部持って、社会科準備室に向かった。先輩と並んで。先輩がいる右側だけに神経が集中しちゃってる気がする。
「ねぇ?」
「はいっ」
しまった。声が裏返った。チラッと先輩を伺うと、案の定クスクスと笑われている。
「名前なんての?」
「あ、ありおか…です」
「そ」
えぇぇぇぇ、それだけ?!
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作者名:ゆー | 作成日時:2018年12月21日 21時