高木先輩♀とありおかくん (ページ33)

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「射的、ないですね」

射的の屋台がなかなか見つからなくて。先輩がやりたいんだから早く見つけなきゃって思って。でも、人が多くてなかなか進めなくて。ひとり焦ってた。

気がつくと、隣を歩いてたはずの先輩がいない。慌てて引き返すと、5店くらい手前の屋台と屋台の間にポツンと立ってた。この人混みの中、ポツンて表現はおかしいかもしんないけど、それでも先輩の周りには誰もいない、何もないように見えて。斜め下、一点を見つめて動かない先輩は無表情だったけど、悲しいような今にも泣き出しそうな、そんな感じだった。
学校でのニコニコした顔しか見たことなかったから、先輩のその顔は俺の心をギュウって締め付けてきて。先輩のことを守ってあげたい。あんな顔二度とさせたくない。させちゃダメだ。そう思った。

「先輩！ごめんなさい」

謝った俺をチラッと見る先輩は、変わらず無表情。

「あ、あのっ。先輩とはぐれたくないから。っと…手、繋いでくれませんか」

俺が差し出した左手に、そっと右手を乗せてくれた先輩は、真っ赤になってうつむいてた。ええっ、何この反応。めっちゃ可愛い。

それからは、さっきの先輩は見間違いじゃなかったのかって思うくらい。いつもの、学校で見る先輩と変わらなかった。

「あっ！これやろう」

射的を探しながらいろんな所に立ち寄っては遊んでを繰り返した。屋台を離れるたびに手をつないで。
手を出すのも、繋ぐのも、お互い慣れてきた頃。

「「あった！」」

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