ひとめぼれ？ ページ20
「あっ」
山田の声に顔を上げると、高木先輩がいた。
最近の山田は、例の噂のことで高木先輩をよく思ってないのは変わらないけど、俺の「好き」って気持ちは否定しなくなった。そんな山田に、外に高木先輩がいたとか、手振ってもらったとか、報告するようになった。だって、言いたいじゃん。噂を確かめるために、4階の例の部屋まで行ったとか、薮っち先生とどうだとかは、さすがに言えねーけど。
高木先輩は同級生の……男子数人といた。楽しそうに話して笑って、隣にいる男子の腕をバシバシ叩いている。いてーよ、って言われても尚、笑ってる。仲いいんだな。あんな高木先輩を初めて見て嬉しかったけど、なんとなくモヤモヤする。
あ。高木先輩がこっち見た。
「あーりおーかくーん」
可愛い笑顔で手を振ってくれる先輩に、俺も手を振り返す。前までペコペコ頭下げてたけど、もういいやって思って俺も手を振ることにしたの。いっちばん初めにドキドキしながら振り返したときの、先輩のパアっと花が咲いたような笑顔が忘れられない。すっげー可愛かったんだから！
「「かわいい…」」
声が重なって隣を見る。は？あれだけ反対しときながら、お前も高木先輩に落ちたのか！山田に抗議しようとしたら、高木先輩を見たままの山田がつぶやいた。
「なぁ、大ちゃん。高木先輩の後ろにいるの誰…」
山田に言われて見ると、確かに高木先輩の後ろにひとり、女の先輩がいる。男だけかと思ったら、高木先輩より背の低いその先輩は、高木先輩に隠れて見えなかっただけのようだ。
「どうしよう、大ちゃん」
山田のひとことは、俺の動きを止めた。
「俺…ひとめ惚れしたみたい」
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作者名：ゆー | 作成日時：2018年12月21日 21時
