元猿、教祖を殴るまで。【呪術廻戦】

（39）かつての片割れに恨みを ページ43

『…でも、付き合ってほしい、って言いたいんだけど、』



「…え？そ、そりゃもちろん、」



『付き合う前に、一個だけ、



……悟に、お願いがあるの』









Aは、僕から身体を少し離して、



両手をお互い握ったまま、そう言った。



なんのこと、そう聞こうとして、



Aが下唇を噛んでることに気付く。



泣きそうな顔をして、Aが、僕を見上げた。







「…なんの、お願い？」



『…助けて、欲しいの』



「…分かった、助ける、



…だからちゃんと言って、なんのこと？」



『…教祖サマを、助けて』








……僕と両想いなのに傑のことで、



彼女はこんなにも感情を動かされてしまう。



そんなしょうもないことに、



物凄く苛立ってる自分がいて、情けなくなる。



…でも、苛立ちと情けなさを顔に出したら負けだ。



そう思って、Aの顔を覗き込んで、



Aと目を合わせた。







「…A、もっと詳しく聞かせて」







Aの誕生日、…傑の誕生日、傑は高専を襲う、



そう傑からさっき、直接言われた、そう言われた。



…あの、残穢のときか。



Aは、傑を何とかして生かせないか、



ネジ曲がった思想によって、



堕ちるとこまで堕ちてしまった傑を、



人として救けてあげてほしい、



…救けられた時には私からちゃんと、



付き合ってくださいって、



そう言うから、…私に出来ることなら、何でもするから、



そう苦しそうに言った。



…さっきより、ずっと衝動的に、Aを抱き締めて、



分かった、分かったから、そう言った。



涙を必死に堪えてそう言う彼女を、泣かせてはいけない。



これ以上、話させてはいけない、そう思って、



腕の中の細い肩を、絶対に離すまいと強く、抱き締めた。

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