元猿、教祖を殴るまで。【呪術廻戦】

（36）呼び捨てと体温 ページ40

…ふと、いつからか会話の途中から見ていた水槽から、



悟さんに視線を向けた。



…何故か、呆気に取られた表情をしている悟さんを見て、



思わず聞き返した。







『ど、どうしたんですか、』



「…ううん、そう、水族館行きたかったんだ。



僕もなんだかんだ来るの、2回目とかだし」



『悟さんも？』







意外だ。



もう女子何人も引き連れてきそうなのに。



男子2人に対して、女子3人グループとかで行っちゃうタイプの、



私に本来、縁のない陽キャ中の陽キャだと思ってたのに。



すると、悟さんは見たこと無い、



…なんだろう、寂しさを備えた笑顔を浮かべた。








「…Aちゃん、敬語じゃなくていいよ。



いつ言おうか迷ってたけど、たった1歳差で敬語だと、



なんか距離置かれてるみたいでちょっと悲しい」



『…いいんですか？



何処の馬の骨かも分からないやつに、タメ口なんて使われて』



「僕がそっちの方が良いの」



『………わ、かった』







敬語とタメ口は、やっぱり壁の薄さが段違いだ。



さっきと物理的距離は全く変わらないはずなのに。



少しぶつかっている肩の温度を一瞬にして感じる。



…悟さん体温高いなと思って、そう言えば、と、思い出す。



一言だけ、口から言葉がもれた。








『…悟』



「…えっ」








悟さんの目が見開かれる。



前々から、悟って呼んでよ、そう何回言われてきただろうか。



口調を変える時、呼び方も変えよう、そう自分の中で決めていた。



そこでもれた『悟』に、悟さんが、



……悟が、何とも言えない顔をしてこっちを見た。








『…前々から、悟が良いって、言ってなかったです…



違う、言ってなかったっけ』



「…うん、ありがとう。



…そっちのほうが良い」








そう言って悟さ、…悟は、少し悲しそうに笑った。



さっきから時々するこの表情は、なんだろうか。



どうしたら良いかわからず、少し視線を巡らす。



すると、悟、の、カクテル？を持たない方の手が震えてるのが見えて、



…思わず、その手に自分の手を重ねた。

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