元猿、教祖を殴るまで。【呪術廻戦】

（15）渋いおにぎり ページ16

『どうする？先に御飯作っちゃう？』






そう聞いてきたAちゃんに時計を見て、夕方の5時だし、



先に御飯作っちゃおう、と返した。



手を洗ったり、お土産を渡したり等々済ませた直後なのに、



既にAちゃんは慌ただしく動き始めていた。



恵を手招きして、道具の場所を聞くAちゃん。



津美紀がニヤニヤしながら、僕の隣に並んだ。






「五条さん、あんな可愛い人どこから拾ってきたの？」



「山の中だよ、任務先のね」



「ふぅん、料理も出来て、あんなに可愛いって無敵だね。



なんか五条さんにちょっと似てるけど」



「僕に？」






似てる？そう思って、彼女の顔を改めて見る。



珍しく笑顔の恵と話しながら、鍋を火にかけている。



…似てる、か？







「なんかね、行動の端々がそっくり」



「そう…？」







津美紀はお似合いだねぇ、とだけ言って、



自室に戻っていった。



やることもなくなって、



テレビを付けてソファに座ろうとすれば、



悟さん！、とAちゃんの声が聞こえてきた。







『悟さんも、付き合って』







多分、料理に付き合って、という意味だったんだろうに、



少しドキッとして、慌てて平静を取り繕った。







「料理〜？」



『うん、私がいない時でも作れるようになってください』






メニューを聞けば、生姜を使った玉子炒飯、と言われた。






「渋っ」



『恵くんの要望です』



「オマエ、そんなおっさんみたいな好みしてんだ」



『なに馬鹿なこと言ってるんですか、ほらご飯炊いて』






今思い返せば、何故僕が料理ができるかと言えば、



確実にここでAちゃんに教えてもらったからだろう。



恵の家で何度も何度も、料理を手伝ったからだ。



…初日だったこの日は、恵が焦がしたり、僕が卵を落としたりで、



Aちゃんが終始バタバタしていた。

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