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【9】後輩くん ページ9

「あでっ」






目の前で、書類を抱えながら歩いてズッコケた男の子。



見事に顔面から落ちていったうつ伏せだ。



あれから新しいことを散々教え込まされ、気付いたら12月。



入学して3週間ほど経ったが、未だに高専は迷いがちだ。



授業に行く途中だった私は、流石に無視はなぁあぁ、と立ち止まった。



そのまま、面識はないが、心配なので駆け寄る。





『大丈夫?』



「…おわー」





おわー、と謎の声を発して黙ってしまった彼。



ズッコケたまま、腕をついて顔だけ上げて、柔らかい笑顔を向けられた。



あら可愛い。



黒髪のマッシュの男の子は、えへへ、と困り眉で笑った。






「綺麗な人に転ぶの見られてたなんて」



『…綺麗な人?』






男の子が少し頬を桃色に染めて笑って、貴方ですよ、といった。



そのまま少し気恥ずかしそうに立って、



地面にうつ伏せていたお腹あたりをパッパと払った。



…高っ、背…。



めちゃめちゃ見下されてる。






『やだ、お世辞は大丈夫よ』



「いやいや、五条先輩が惚れるのも分かります。



……あれ、七海どこいった?」



『…五条先輩?七海?』



「あ、はじめまして、1年の灰原 雄と言います。



七海はもう一人の1年です」



『…なるほど』







五条くん、本当に私のこと好きになってくれてたのか。



あんなに飄々と受け流したのは悪かったかもしれない。



でも、残念ながら殺した、



いや、殺しかけた相手と付き合うのは違う。



それを黙ってる身としてはもっと違う。



私は幸せから遠くかけ離れるべき人間だ。



だから、五条くんには申し訳ないが、これからも避け続けるつもりだ。



目をキラキラとさせる後輩くんを目の前に、そんな事を考えた。



すると、バチコンという音がして、灰原くんがお辞儀したようになった。



そのお辞儀で、後ろから金髪が現れた。



…だからさ、背が高いんだって、五条くんといい夏油くんといい、



灰原くんといい君もさ。



灰原くんが、多分後頭部を引っ叩かれたんだろう。

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作者名:まる | 作成日時:2024年1月26日 7時

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