【8】4人でしょ ページ8
「なにこれ」
『なんですかこれ』
「…君たち箱入り娘過ぎないか」
「生憎俺の場合性別間違ってんぞ」
「比喩だよ」
くれーぷ、というものを差し出される。
夏油くんが、食べたこと無いならものは試し、と、
スイーツ甘々のと、ハムだかが巻かれている小腹系を買ってくれた。
最初は、見た目的にはいちごが入ってるほうが豪華に見えたのだが。
『…ハム、こっちのほうが好きかも』
「Aちゃんは甘い系よりしょっぱい系か」
『みたいです』
何故か黙って食べていた五条くんがしょげる。
夏油くんが苦笑いをして、五条くんの肩に腕を置いた。
すると、もーらい、と声がして、私の持っていたいちごが大きく抉れた。
「んまー、やっぱクレープ良いねぇ」
「おせーよ硝子」
「面白かったから見てたの。
五条がAちゃん誘いたかったのに、
しょっぱい系のほうが好きって分かって、
自分の好みとAちゃんの好みでめちゃくちゃ悩んで」
「おい待て」
硝子ちゃんの口を背後から抑えた五条くんは耳が赤くなって、
ニヤニヤとする硝子ちゃんを引きずっていった。
夏油くんが、笑って私に話し掛ける。
「どう？」
『？』
「Aちゃん的に、悟はあり？」
『…恋愛対象として、ってことですか？』
「そうそう」
私は困り眉で首を振った。
残念ながら出会って5時間で判別できる人間じゃない。
『…正直、わからないです。
好意を向けられたのも初めてで、困惑してます』
「…高嶺ってやつか」
『…なんて？』
「あぁいや、独り言だよ。
…悟なら大事にしてくれると思うから、
少しでもありなら考えてやって」
『…分かりました、』
夏油くんがそう言って、柔らかく微笑む。
…なんかお母さんみたい。
そう思って、完全に無防備な笑顔をしてしまった。
夏油くんの笑顔が引きつったのは、気付かなかった。
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作者名：まる | 作成日時：2024年1月26日 7時
