夕暮れ沿い 2

雪急く朝が来る ページ18

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奈緒side







藤原「ん〜？」






奈緒「どうしたの？」







台湾から帰ってきた次の日。


またすぐ次の曲を作っている聡が
作曲ルームでうなっている。









藤原「なんかね〜…設定が無茶苦茶になっとって…」









聡が開いているのは
パソコンに入っている
声をコーラスさせるアプリのようなもので
私はいじっていない。



となると雄大か…






奈緒「あ…
この間聡どんなの作ってるのかなって
聞きたくて
パソコンいじった時に変なの押したのかも。

ごめんね？」






そう言うとニコッと笑う聡。







藤原「気にしなくていいよ。
どれ聞いたの？」







と怒りも疑いもせず普通に話してくれる。







その優しさが痛い。









奈緒「Pretenderってやつ。
何かの主題歌になるの？」









藤原「うん。コンフィデンスマンの映画の。」









奈緒「そっか。見にいくね。じゃあ、仕事行くね。」









藤原「いってらっしゃい」









普通。








いつもの朝だし
いつもの聡だし
いつもの会話。







だけど、なんでこんなに心地の悪い普通なんだろ。







雄大との事の後ろめたさ？





あの曲を聴いたから？









いや。違う。







あの日から、聡と目が合わないんだ。



普通に接してくれてる聡だけど
一切目は見てくれない。







…それが嫌なんだ。








あんなに私の事好きじゃなくてもいいから
って思ってたくせに
結局思い合っていたいんじゃん。




聡の側に私の心をおいた所で
聡の心は私の側にくるわけじゃないのに。









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