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帰り道ページ12

「あれ、和どこか行くの？」

一緒の講義が終わってノートやペンなどを片していると隣に座っていた和はすでにバッグの中に片し終えた様子でいそいそと席から立ち上がった

よほどの用事がない限り同じ家に住んでるんだから一緒に帰る

というのが俺らの間で暗黙の了解になってるんだけど…

今日はどうやら違うらしい

「んふふ、デートですよ」

「…あぁ」

なるほど、ね

相葉ちゃんと待ち合わせでもしているんだろう

軽く挨拶をして和は急ぎ足で出口へと向かっていった

さて、俺も帰ろうかな

生憎俺には恋人なんて甘い関係を持つ相手もおらず、待ち合わせなんてしているはずもない

はぁ…と一つため息をつくと、勉強道具を詰め終えたバッグを手にして大学を後にした

｢………｣

家まで帰り道、いつもの話相手が隣にいないとなると考えに耽ってしまうようだ

今日は翔くん夜勤で帰ってこないなとか

和と相葉ちゃんは久しぶりのデートだし帰りも遅いだろうとか

大野くんはまだ仕事してるのかなとか

｢…あ、｣

そこまで考えてふと思い立ち、前へ進めていた足をいま通って来た道へと進め出した

カランカラン

耳に心地よく響いてくるドアの上の部分につけられたベルの音を聞きながら一軒のお店へと足を踏み入れる

白と茶色を基調とした柔らかい感じのする外観にガラス張りのショーウィンドウ

店内に入ると甘い香りや香ばしい食欲を引き出される香りが鼻を擽ってくる

「あ、まつじゅん」

カウンターの下からひょこっと顔だけを覗かせた"彼"はいつものふにゃりとした笑顔で笑っていた

「あれ？大野くんもう終わり？」

いい香りのする店内に反してパンは一つも並んでおらず陳列棚は閑散としている

「うん、今日は店長が用事あるみたいで…おいら１人じゃ無理だし」

このお店は店長さんと大野くんの２人だけで回しているのでいつも忙しそう

「そうなんだ、じゃあ一緒に帰れる？」

「えーと…ちょっと待ってて」

大野くんは急いで裏の方へと消えてしまった

しばらくすると先ほどまで身につけていた青いエプロンを外した大野くんが戻ってくる

手には余り物だろうか、袋に詰められたパンを持っている

「まつじゅん、帰ろ」

「帰れるんだ？」

「あ、うん。店長に挨拶してきたの」

その後、他愛ない会話をしながら家に帰ってくると案の定誰もいなかった