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第三百七十八話 ページ31

吹く風が、冷たい。

どれくらい長く、この場に居続けたのだろう。


目の前の相手はいつまでも沈黙を貫くだけで、口を開かない。

続ける言葉もないのなら、もう帰ってもいいだろうか。





そう、目の前にいる男。石動零。

突然父親からの呼び出しで、急いで鬼太郎くんの家から帰ってきたはいいものの、

まさか、呼び出した理由が彼だとは思っていなかった。


一切口を開くこともなく、互いに正座して、向き合い続けるこの空間に、

俺はいつまで黙っていればいいんだろうか。


「Aさん」

『…はぁ、なんでしょうか。
大逆の四将のことならご協力致しかねないとお伝えしたはずですが』


自分でも驚くほど丁寧で淡々とした声だったと思う。

向けた目が酷く冷たいことくらい、自覚もしていた。


どれだけやっても、どれだけみていても、彼の行動は決して善良とは言えない行為だ。

まるで、かつての俺の一族のように。

良い妖怪も悪い妖怪も、見境なく彼は殺すだろう。


「いえ、そのことではなくて…」


ようやく彼が、こちらから目を背けたと思えば、

もう一度俺の方を見て、言葉を続ける。


「…なぜ、妖怪を助けるのかと、思ったのです」


彼の赤い目が、じっと俺を見る。

別に妖怪に歩み寄ろうだなんて彼は微塵も考えていないんだろうけれど、

突然のその問いに首を傾げた。


『…命とは尊く、守るべきもの。それは人も妖怪も関係ない。
……今の今まではずっとそう思って生きてきた』


そう、今までずっとそう思い込むしかなかった。

自分の気持ちを形として表せなかったから。

彼が不思議そうに瞬きをするのを見て、俺は笑みを浮かべた。


『本当は違うんだ。俺は彼らが笑って生きてるのを見たら、心がふわふわするんだ。
笑顔で平和で、少し煩かったりトラブルがあったり、そういった今が幸せなんだ。

ずっと、ずっと、守りたかった。ようやく自分の気持ちを理解できたから。
だからそれを壊すのならたとえ誰であろうと容赦はしない。君もだ。石動くん』


瞼の裏に映る、笑顔が本当に俺が守りたかったものだ。

その為ならこの死にゆく体が、どうなっても良い。


『君の復讐と俺の覚悟。どちらが強いかな』


たとえ、手も足もでなくたって、足掻くんだ。

弱いならもっと強くなるように修行すれば良い。


負けない。

守るもののために、負けるわけにはいかない。

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モブ - 好きなアニメの夢系小説見れるのすごい嬉しいです!一気見しちゃいました!いくらでも待ち続けるので‥つづきを‥っっ (2月6日 16時) (レス) id: ab7894b478 (このIDを非表示/違反報告)
ユリの花(プロフ) - 更新お疲れ様です!ゲゲゲの鬼太郎は大好きなアニメの1つなので夢小説があって嬉しいです!最近はコロナなどで不安定なご時世ですがこれからも無理せずに頑張って下さい!ずっと応援しています! (2021年2月13日 13時) (レス) id: 3da8e597eb (このIDを非表示/違反報告)
くまくまたろう。(プロフ) - 初コメ失礼します。こんなに素晴らしい作品が書けるなんて……羨まし()ゴホンゴホン…素晴らしいです……こんな作品……ハマるしかないですよ……ありがとうこざいます……これからも応援してます…… (2019年12月9日 20時) (レス) id: 92750228b4 (このIDを非表示/違反報告)
とりまろ。(プロフ) - マリイさん» 私は私が書きたいものを書きたいんです。最近は別の方に脱線しているという理由もありますし、これ以上作品を増やすことはおそらくないです。ごめんなさい。 (2019年11月6日 11時) (レス) id: b13316b4f3 (このIDを非表示/違反報告)
マリイ - 5期の西洋妖怪バルモンドの小説も書いて欲しいです バルモンドは夢主を溺愛してる設定で (2019年11月1日 16時) (携帯から) (レス) id: 82a6cba0ff (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とりまろ。 | 作成日時:2019年4月30日 13時

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