第三百二十九話 ページ32
こつん、こつんと病院の廊下に響いて跳ねる靴の音。
真実を聞きにいく。あの時の全てを。
それが例えどんな結果であろうとも…。
-うらむの?-
『恨まないよ。そう決めたんだ。』
耳に届いた鈴の音にそう答えた。
柔らかな笑い声に続いて鈴の音は-そっか-と口にした。
そうだ。もう昔みたいに恨まない。
いつか命は消えていくもの。
まなちゃんがそんな力を持ってしまったのなら、俺が助けてあげなきゃいけない。
きっと、時竜の時の俺みたいに苦しんでいるだろうから。
「先輩…?」
『…やっほ、まなちゃん』
ゆるく手を振ればまなちゃんがこちらに突っ込んできた。
いや、抱きついてきたって方が正しいかな。
『おっと…よしよし、大丈夫かい』
「お母さんが…猫姉さんが…私のせいで!」
『…落ち着こうか。ほら、ゆっくり深呼吸して。
ちゃんと話、聞いてあげるからね』
背を優しく撫でたり、とんとんと軽く叩いて小さく震える少女を落ち着かせた。
そうだよ。不安だよね。わかるんだ、だからこそ心を静かに。
『そう、いい子。えらいね。
一度にたくさん起こって混乱したよね。辛かったね』
涙を流す少女の頭を撫でてやりながら優しく言った。
パニックになったら判断がうまくできなくなるから。
だから、ゆっくりしよう。お茶でも飲んでのんびりと。
それからだいぶ落ち着いたのだろう。
呼吸の整ったまなちゃんを廊下の椅子に座らせてからその隣に座った。
「…お母さんが…猫姉さんに傷付けられて…それで、それで…私…!」
『ゆっくりでいいんだよ。いつまでも待っているから。
辛いなら無理して話さなくたっていい。大丈夫』
まだまだ不安定な子供なんだから仕方ないだろう。
幼いのだから親が急に友人に殺されかけたとなると尚更だ。
「猫姉さんが怖くなって…手を向けたら…そしたら…」
『…攻撃してしまった?』
俺が尋ねるとまなちゃんは頷く。
原因不明の力は確かに怖いな。
多分発動条件もよくわかっていないんだろうから。
『…ごめんねまなちゃん。俺にはその力の意味もよくわかんないや。
でも決してパニックになっちゃいけないよ。焦ると冷静な判断ができなくなる』
まなちゃんの前に膝をつき、手を合わせて、
じっと目を合わせてできる限りの優しい笑顔を浮かべる。
こんな子供にこんな力を与えた神様は、何を考えているんだろう。
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とりまろ。(プロフ) - あんこもちさん» 鳥肌になってくれて嬉しいですわッッ!(((新章も始まりまして更新バリバリ頑張りますよ!コメントありがとうございます! (2019年4月30日 13時) (レス) id: ba9bcb022c (このIDを非表示/違反報告)
あんこもち - わぁぁ!凄い!全部の題名と繋がった!何か意味があるんだろうなぁ〜と思ってたけどほんとに合った!あそこ読むとき鳥肌やばかったです!鬼太郎と夢主ちゃんの恋の進展も気になる、、、。更新頑張ってください!長文失礼しました。 (2019年4月30日 8時) (レス) id: 209354e5c5 (このIDを非表示/違反報告)
とりまろ。(プロフ) - 待っていてくれてありがとうございます!不定期更新ですが完結まで頑張ろうと思います! (2019年4月20日 20時) (レス) id: ba9bcb022c (このIDを非表示/違反報告)
みっこ - 待ってました!忙しくて更新できない時が多いかもしれませんが少しずつ更新頑張ってください!これからも応援しますっ!(・ω・)ノシ (2019年4月20日 20時) (レス) id: f38aff3a8c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とりまろ。 | 作成日時:2019年3月24日 15時